傷害致死事件で娘失った母、検察に再捜査申し入れ 交際男性の「暴行が原因」民事訴訟は認定

2022/07/28 05:30

会見で思いを語る有友裕子さん=尼崎市七松町1の兵庫県弁護士会阪神支部

 2015年12月に兵庫県芦屋市で起きた傷害致死事件で、死亡した女性=当時(27)=の母親(71)が、容疑者とされた元交際相手の男性(39)を不起訴処分とした神戸地検尼崎支部に再捜査を申し入れた。母親側の弁護士によると、地検は女性の死亡と暴行との立証が困難などとしたが、民事裁判では医師の鑑定意見が新たに提出され、裁判所は死亡は男性の暴行が原因と認めていた。 関連ニュース 娘婿の頭を棒で殴ってけがさせた疑い 神戸市職員の男を逮捕 神戸・長田 「脅すつもりだった」リュックに包丁、裁判所へ 調停前に相手側弁護人と口論、自ら110番 暴言市議に辞職勧告 丹波篠山市会が決議案可決

 弁護士などによると、事件は15年12月28日午前1時前に起きた。有友尚子さんは、元交際相手の男性とタクシーで口論となり、JR芦屋駅北側で下車。同駅交番前で顔面付近を殴打されて倒れ、心肺停止の状態で搬送された。16年1月10日に亡くなり、死因は脳機能不全とされた。
 男性は逮捕されたが、神戸地検尼崎支部は16年4月11日付で不起訴とした。母親の裕子さんは検察官から、1回殴られただけで倒れた点などを挙げて「事件前から尚子さんに脳動脈瘤(りゅう)がなかったとは言い切れない」と説明されたという。検察審査会へも申し立てたが、同会は不起訴相当と議決した。
 裕子さんらは18年10月、男性に損害賠償を求めて提訴した。一審の地裁尼崎支部は殴打と死亡の因果関係を認めなかったが、控訴審では、殴打で首が急激に回転し動脈に亀裂が生じることで、くも膜下出血に至った可能性を述べた医師の意見書を裕子さん側が提出。大阪高裁は意見書などを基に、「死亡は殴打行為を原因と認めるのが相当」として賠償を命じ、判決が確定した。
 検察への再捜査申し入れは、民事訴訟の判決などを踏まえて行われ、代理人弁護士は「検察の当初の判断はかなり疑わしくなっている」と説明する。裕子さんは「27歳でまだまだこれからというところだった。(男性は)まったく反省をしておらず、何も言えない娘に代わって私がやるしかないと思っている」と話した。(篠原拓真)

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