神戸港から飛躍した商社の歴史を漫画に 鈴木商店の流れくむ双日、神戸の13図書館に寄贈
2022/08/04 05:30
竹下景子さん(右)に漫画を手渡す藤本昌義社長=東京都千代田区(撮影・永見将人)
総合商社の双日(東京)が、同社の前身となる3社の歩みをたどる漫画を作った。巨大商社「鈴木商店」をはじめ岩井商店、日本綿花は明治から大正にかけて神戸港を起点に発展し、日本の産業革命をけん引したとされる。双日は先人の苦労と功績を次世代に伝えようと、漫画を神戸市の13図書館にも寄贈。同社で1日に開かれた贈呈式では、このうち「こども本の森 神戸」(同市中央区)の名誉館長で、俳優の竹下景子さんに手渡した。
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鈴木商店は神戸港が開港して間もない1874(明治7)年に神戸で創業。製造業を中心に約80の事業会社を設立するなど急成長したが、昭和初期の金融恐慌で破綻した。「幻の巨大商社」とも呼ばれる。
岩井商店は輸入品の国産化を進め、製造事業を展開。日本綿花は綿花の直輸入会社として国内の紡績業の発展を支えた。
双日は3社の歴史を幅広く伝えるため、「創業」と題した第1巻を制作した。外国優位だった屈辱的な取引や、大阪商人ら二十数人が協力して設立した共同会社、合成樹脂セルロイドを国産化するまでの道のりを描写。「いつまでも外国頼りではいかん!」と、神戸港を舞台に奮闘した商人の高い志や熱い思いを伝えている。
双日の藤本昌義社長から漫画を受け取った竹下さんはかつて、鈴木商店を題材とする舞台「お家さん」(玉岡かおるさん原作)で主人公よね役を演じるなど、同社との縁も深い。
竹下さんは「3社がなければ今の日本はなかった。市民一人一人が大きな仕事を成し遂げていく歴史を知って、子どもたちが夢を抱くきっかけになれば」。藤本社長は「日本の礎を築いた先人のように、若い人たちにもチャレンジ精神を抱いてほしい」と語った。
2巻以降も四半期ごとに発行する計画で、紙版は非売品だが、電子版は双日の公式サイトから読める。