流行はコロナだけじゃない…小児科医悲鳴「現場はもう限界」 腹痛や嘔吐、症状見極め困難

2022/08/10 05:00

発熱用の隔離室で診察に向かう鷲尾隆太院長=神戸市中央区港島中町3、わしおこども医院

新型コロナウイルスの流行「第7波」は子どもたちにも感染が広がり、兵庫県内の小児科が逼迫(ひっぱく)している。RSウイルスなど、コロナ以外の感染症の流行も混乱に拍車をかけており、小児科医からは「現場はもう限界」と悲鳴が上がる。ただ、子どもに心配な症状があれば「ちゅうちょせずに受診を」と呼びかけており、綱渡りの対応が続いている。(大橋凜太郎、井川朋宏) 関連ニュース 新型コロナ感染の高齢女性、自宅療養中に死亡 基礎疾患なし 神戸 コロナ感染した本紙記者、想像以上のつらさに「これで軽症?」 「体調、社会復帰」療養中に感じた不安 ワクチン副反応で療養中にイベントや温泉へ フェイスブックで判明 市職員を処分


 「どうしたらよいでしょうか…」。神戸・ポートアイランドの「わしおこども医院」には、事前の診療予約や相談など、保護者からの電話が絶えない。
 同医院の外来患者は、第6波のピーク時に1日40~50人程度で、7月中旬も同様だった。だが、同月16~18日の3連休明けに急増し、翌19日は約150人に跳ね上がった。8月に入っても勢いは衰えていない。
 発熱患者の診察は時間で区切り、隔離した部屋で対応する。スタッフが家族などの濃厚接触者になって出勤できない日もある。
 「機能を維持するのが大変で、今が限界」と鷲尾隆太院長(36)。初診の患者も増えており、「周辺の診療所がパンクし、行き場を失って来院する子どもが増えているのでは」とみる。
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■休めぬスタッフ
 子どもがコロナに感染しても、これまでは無症状や軽症が多いとされてきた。
 だが日本小児科学会によると、オミクロン株が流行した第6波以降は発熱やのどの痛みを訴える子どもが増加。発熱時にけいれん発作が起きることもある。兵庫県小児科医会は、発熱が短くても腹痛や嘔吐(おうと)、関節痛などを伴う症例もあると指摘する。
 県内では8日時点で、第7波の感染者のうち10代が約3万9千人、10歳未満も約3万3千人に上る。
 さらに今夏は、RSウイルスや手足口病などの流行が小児科医を悩ませる。症状が幅広いコロナと見分けるのは難しく、検査時間などで診療が延びる。その結果、同医院もスタッフが十分に休憩を取れない状況が続いている。
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■けいれんに注意
 医療逼迫の緩和のため、兵庫県は今月から、神戸市を除く2~59歳で重症化リスクの低い軽症者に検査キットを配布。受診せずに自ら検査して登録する「自主療養制度」を導入した。
 一方で、県小児科医会の藤田位(たかし)会長(69)は「子どもの症状を見極めるのは難しい」と注意を喚起。「特に未就学児の場合、心配なら受診した方がいい」と話す。
 国立成育医療研究センター(東京)は、機嫌▽食欲▽顔色▽呼吸▽意識-を見極めのポイントに挙げる。けいれんしている場合は救急車を呼んだ方がよいという。
 生後3カ月未満の乳児なら、38度以上▽呼吸が苦しそう▽ぐったりしている▽半日以上尿が出ない-のいずれかの場合は早急な受診を勧める。3日以上発熱が続いたり、咳(せき)が多かったりする場合も受診が必要だ。
 鷲尾院長は「特に1歳未満の発熱はさまざまな原因が考えられ、全身の状態を診たい。症状があれば、遠慮なく相談を」とする。
 ただ、現状は多くの医療機関が混雑し、受診自体が難しい。兵庫県の担当者は「基本的にはかかりつけ医か、健康相談コールセンター、保健所に電話し、つながるまでかけてもらうしかない」とする。
 夜間や休日は、看護師らが対応する子ども医療電話相談「#8000」が利用できる。平日と土曜は午後6時~翌日午前8時。日曜・祝日は午前8時~翌日午前8時。濃厚接触者などの場合は新型コロナ健康相談コールセンターTEL078・362・9980(24時間対応)へ。
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