JR神戸駅のホームでなんか違う? 列車の到着知らせる「接近メロディー」に変化 調べると…
2022/08/13 11:50
電車の接近を知らせる電光掲示板。メロディーとともに到着を知らせる=神戸市中央区相生町3、JR神戸駅
♪レソソミレミ~ レソソミレミ~。JR神戸駅(神戸市中央区)のホームに、列車の到着を繰り返し知らせる「接近メロディー」。JR西日本が、神戸線のために制作を依頼したオリジナル曲「さざなみ」で今年、採用から25年を迎えた。軽快な音色が印象的だが、兵庫県出身の記者は引っかかっていた。「いつからか、微妙に音変わってない?」(大橋凜太郎)
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接近メロディーは、列車の入線を乗客に伝えて、注意を促すために流される。かつてはけたたましいブザー音が多かったが、私鉄などでメロディーに切り替える動きが広がり、JR西も1997年3月、さざなみを採用した。
西谷喜久さん(64)=堺市=が、瀬戸内海のきらめきや六甲の風をイメージして作曲した。主旋律を伴奏が包み込んで立体的に表現するアレンジで、警告音の要素と芸術性を兼ね備えた音に仕立てた。
それから四半世紀。さざなみは神戸線の多くの駅などで使われているが、幼少期から耳なじみの記者は微妙な変化を感じていた。旋律やテンポが変わったわけではないと思うが、響きというか雰囲気が…。
JR西の担当者に調べてもらった。すると、やはり2015年3月に変更されていた。
当時の資料によると、ホームの安全性を高める取り組みの一環で、音質を見直して騒音の中でも聞き取りやすくして注意喚起効果を高めた。
全体の音圧を上げるなどしたとみられるが、西谷さんは見直しを知らされず、変更の詳細などははっきりしていないという。
一部の愛好家は、敏感に反応した。全国の駅メロディーを紹介するサイトを運営する男性(31)は、変更前後のメロディーを動画に収めてユーチューブに投稿した。
この男性は、オリジナルが好みといい「青い海や白い砂浜の風景を思わせる。やや速めのテンポが、列車が入ってくる緊張感を表現していた」と絶賛し、変更後は「警告音の側面が目立ち、海のコンセプトが損なわれた」と残念がる。
一方で、10代の鉄道ファンの1人は、変更版を「聞き取りやすい。曲調もシンプル」と支持する。
ただ基本的に、いわゆるマイナーチェンジということもあり、多くの人は変化に気付いていない。
JR神戸駅近くに住む自営業の男性(43)はメロディー自体、意識してこなかったというが、新旧を聴き比べると得心した様子で「全く別物。新バージョンはSF感がなくなってしまった」と評した。
神戸ゆかりのメロディーを楽しむ愛好家、安全追求に余念がない鉄道会社、駅の日常のシーンとして無意識に耳を傾ける利用客…。少なくとも記者は、さざなみがいかに地域で浸透しているかを再認識した。
さざなみの変更前後のメロディーは、男性のサイト「ご当地駅メロディー資料館」(7-pref.com/gotochi.htm)の「イメージメロディー」で確認できる。
【接近メロディー】鉄道駅ホームの「入線警告音」などとも呼ばれ、発車メロディーとともに路線別に設定されることが多い。発車音は駅ごとに、JR茅ケ崎駅(神奈川県)の「希望の轍」、JR恵比寿駅(東京)の「第三の男」など地域にちなんだ曲を流すこともある。JR神戸線の接近音もかつては、さくら夙川駅(西宮市)の「桜」、須磨海浜公園駅(神戸市須磨区)の「かもめの水兵さん」など特色があったが、著作権料などの関係で、現在はさざなみが使われている。