兵庫で国内初確認、5年前の騒動落ち着いたけど… 強毒ヒアリ静かな侵入、高まる定着リスク
2022/08/14 05:30
強毒を持つ南米原産のヒアリ。いったん定着してしまうと、根絶は極めて困難という(環境省提供)
2017年の初夏、体長1センチに満たない小さな生物が、兵庫県内を不安に陥れた。強毒を持つ特定外来生物の「ヒアリ」だ。国内で初めて尼崎市内のコンテナで見つかり、神戸・ポートアイランドでも生息を確認。地元自治体は、注意喚起のチラシを配ったり、相談電話を設けたりするなど対応に追われた。あれから5年。とんと耳にしなくなったヒアリの現状は-。
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南米原産のヒアリは、1940年代ごろから貨物などに紛れ込んで米国やカリブ諸島に侵入。2000年代には、豪州や中国などでも発見されるようになった。働きアリの体長は2・5~6・0ミリ程度で、毒針で刺されると、「火蟻」の字の通り、やけどのような激しい痛みが生じる。
日本国内での初確認は、17年6月。中国・南沙港から尼崎市内の事業所に運び込まれたコンテナで、500匹以上のヒアリが見つかった。さらに、このコンテナが直前に保管されていた神戸市中央区の人工島、ポートアイランドでも、100匹以上が発見された。
人やペットが刺されると、強いアレルギー反応によって重い症状を引き起こす恐れもあり、神戸市は対策会議を開催。ポーアイの約7500戸に注意を呼び掛けるチラシを配り、専用の電話窓口も設置した。
結果的に生息範囲の拡大は認められず、専用電話は1カ月ほどで総合コールセンターに統合され、問い合わせも少なくなっていった。だが、その後も、全国各地でヒアリの確認が相次いでいる。
■18都道府県で発見、約2万8千匹を駆除
環境省によると、中国の港を出たコンテナとともに入ってくるケースが目立ち、発見事例は90件、18都道府県(7月28日現在)にまで広がっている。これまでに見つかった個体数を神戸新聞社が集計したところ、少なくとも約2万8千匹に上るが、定着前に全て駆除できているという。
ヒアリの流入が止まらない理由について、同省の担当者は「中国に対してコンテナ内の殺虫措置などを要請しているが、物流に負担がかかることもあり徹底されていない」と指摘する。昨年9月には、大阪港のコンテナヤードに隣接する土地で複数の女王アリが営巣し、千匹以上が確認されるなど、定着につながりかねないケースも起きている。
同省は警戒態勢を緩めず、ヒアリの活動が盛んになる春から秋にかけて、国内の港湾施設の定期的な調査を続けている。兵庫県内に限れば、17年の尼崎、神戸での発見以降、新たな生息確認はないが、県自然・鳥獣共生課には、港湾関係者から「ヒアリのようなアリがいる」といった通報が今も寄せられるという。
担当者は「一般市民の多くは『ヒアリっていたよね』という感覚だろうが、港湾で働く人たちの意識は依然として高い」と話す。
環境省のヒアリ相談ダイヤルTEL0570・046・110
(小川 晶)