公立中部活、変革待ったなし 専門外の競技担当、長時間勤務…教員の指導限界 地域移行の試行進む 兵庫

2022/08/29 05:30

4月に行われた陸上の兵庫リレーカーニバルで熱戦を繰り広げる中学生。学校単位で競うリレーも今後は様変わりする可能性がある=神戸市須磨区、ユニバー記念競技場

 学校単位で原則教員が指導してきた公立中学校の運動部活動が大きく変わろうとしている。スポーツ庁は2023年度から休日練習や大会引率を学校から地域団体などに移行する方針。背景には少子化で競技人口が減り、長時間勤務にさらされる教員の働き方改革がある。兵庫県内では顧問のほぼ3人に1人が担当競技の専門外というデータもあり、変革は待ったなしだ。(有島弘記) 関連ニュース 【公立中学校の水泳】プール授業の廃止相次ぐ 施設老朽化や熱中症懸念で 【高校教科書検定】探究型意識、工夫随所に 授業転換へ取り組み途上 【大学入学共通テストの情報1】AI時代、欠かせぬ力 指導要領改定で必修化


 日本スポーツ協会が昨年7月に公表した運動部活動指導者の実態調査では、「担当教科が保健体育ではなく、競技も未経験(体育以外×経験なし)」という中学教員は、回答した2053人のうち27%。兵庫県(回答55人)では29%を占めた。「体育以外×経験あり」は全国で52%、兵庫では53%だった=グラフ。
 県内で「競技も経験なし」と答えた教員は「実技指導力の不足」や「自分の研究や自由な時間等の妨げになる」「校務が忙しくて思うように指導できない」と課題を訴えた。
 日本教職員組合が昨年実施したアンケートによると、中学校教員の時間外労働(1748人が回答)の平均は月120時間12分で、「過労死ライン」とされる月80時間を大きく上回る。部活動指導が要因の一つとされ、文部科学省の統計には休日の指導時間が1日平均2時間9分(16年度)というデータもあり、現場の繁忙は明らかだ。
 改善策として柱に据えられたのが、休日の部活動指導を民間のスポーツ団体などに委ねる「地域移行」。同協会の調査では、中学教員の4割以上が賛同したが、3割近くは引き続き休日も指導したいと希望した。このため、有識者らは教職と部活動指導の「兼業」を認めるよう求めている。
 同庁は休日の地域移行について25年度の完了を目指す。各地で試行が始まっており、県内では21年度に神戸、西宮市、播磨町の各教育委員会が民間業者や総合型地域スポーツクラブを活用するモデル事業を実施した。
 また、姫路市は検討会を立ち上げ、加古川市は「冬にも合同練習など試行プランを始め、本格導入に向けた課題を洗い出す」とする。生徒らのニーズや地域の実情を踏まえた運動部活動の模索が進んでいる。
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 「ひょうご子どもスポーツ考」では、公立中学の運動部活動の地域移行、脱・勝利至上主義など変わりつつある子どもたちのスポーツに関する兵庫の現状を伝えていきます。事例やご意見は運動部(undo@kobe‐np.co.jp)へメールでお寄せください。
【部活動の地域移行】公立中学校の教員が担う部活動を地域団体や民間事業者に委託する改革。経済協力開発機構(OECD)によると、日本の中学教員は仕事時間が特に長く、部活などの「教育課程外活動」の占める割合が大きい。中教審は2019年、教員の働き方改革を進めるために部活の在り方を見直すべきだと答申した。学習指導要領では学校に部活実施の義務はなく、教員や生徒は参加しなくても構わない。

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