「県立高校再編」県教委に説明求める声 当事者の生徒ら「議論の場を」、住民「死活問題」

2022/09/05 19:50

高校再編について議論の場を求め、「統廃合学生審議会」を立ち上げた夢前高3年の向山遥温さん(左)。同校生徒会長の吹田翔さんと、学校や地域の未来を考える=姫路市夢前町前之庄

 2025年度に兵庫県立高校14校を6校に再編する県教育委員会の再編計画について、当事者の高校生や周辺住民らから説明会の開催を求める声が上がっている。統合対象となった夢前高(姫路市)の生徒有志は「統廃合学生審議会」を結成し、他校の生徒にも呼びかけて議論の場を模索。市内4校のうち3校が対象となった三木市の仲田一彦市長も地域や中学生向けの説明会を求める。一方、県教委は「高校は学区が広く(該当する)『地域』を特定できない」として、説明の場は設けない方針だ。(古根川淳也、長沢伸一) 関連ニュース 【地図】兵庫県立高校の統合計画 涼宮ハルヒの聖地「消失」か 「北高校」のモデル、西宮北高が統合へ 県立高校125校を110校に再編 兵庫県教委、25・28年度 対象28校を13校に統合

 県内約10校の生徒40人でつくる「高校生エシカル推進委員会」代表として環境保護活動に取り組む夢前高3年の向山遥温さん(17)は7月末、同校の生徒ら12人で同審議会を設立した。
 県教委は7月14日に同校と福崎高(福崎町)の統合を発表。生徒は全校集会で知らされたが、なぜ統合するのか詳しい説明はなく、「今の在校生と中学生が一番影響を受ける世代。地域の過疎化も進む。県教委は生徒と住民に説明し、疑問を解消した上で発展的な議論をしてほしい。意見を聞くことは特色を輝かせるチャンス」と訴える。
 向山さんは、統合後に校舎を利用しない学校では在校生が25年度は2学年、26年度は1学年だけになることで「学校の発展のために生徒が犠牲になってしまう」と懸念する。県教委の担当者や校長を招き、生徒や住民を交えた議論の場を持ちたいという。
 三木北、三木東、吉川の3校が統合対象となった三木市では、仲田市長が「しかるべき時期に、学校所在地の周辺住民代表者に説明を」と求める。県教委にこうした要請をしていることは市総合教育会議でも報告した。
 半世紀近い歴史のある学校もあり、行事などを通して地域と密接に関わってきた。県内全域から約8千点の作品が寄せられる「みなぎの書道展」は吉川高書道部が長年、運営に携わっている。同市内の小中学校統合では説明会を50回以上開催したことにも触れ「地域と学校がともに歩んだ長い歴史がある。住民に考えを伝えるのは行政の役割」と指摘した。
 統合を巡っては、神戸北高がある神戸市北区唐櫃台の「からとの未来を考える会」の四鬼剛会長も「高校の存廃は唐櫃台の死活問題。何らかのタイミングで説明を聞きたい」と訴える。統合対象校の学校説明会を訪れた中学生や保護者、中学校教員からも「情報がない」との声が上がった。
 県教委は「居住地で学校が決まる小中学校と違い、入試で進路を選ぶ高校は地域性が薄い」とし、住民向けの説明会は開催が難しいと言う。対象校では統合検討委員会を公開しているほか、学校関係者向けのアンケートで「継承すべき特色」や「統合校への期待」について住民や同窓生の声を集める予定で、情報は県教委ホームページに掲載している資料を参照してほしいとしている。
■京都と大阪、住民との合意で対応分かれる
 高校再編は近畿各府県でも行われているが、住民らとの合意形成については対応が分かれている。
 京都府教育委員会は2020年度に丹後地域の4校と3分校を再編した際、地元市町や保護者、企業などと懇話会を設置した。「学校をできるだけ残してほしい」という要望に沿い、離れた場所にある旧校の校舎をそれぞれ使う「学舎制」を提示。公聴会などを経て決定した。和歌山県や滋賀県も地域の声を重視する方針を示している。
 一方、大阪府は府立学校条例で「3年連続で定員割れし、改善が見込めない高校は再編対象とする」と定めている。実施対象校では教職員らで「プロジェクトチーム」をつくり、教育課程や教育内容について検討する。住民説明会などはあまり開催していないといい、これまでに大阪市立高を含め16校が減少した(再編案段階の3校を含む)。
(古根川淳也)
【兵庫県立高校の再編】兵庫県教育委員会が3月に公表した「県立高校教育改革第3次実施計画」に基づき、県内125の全日制県立高校のうち、28校を統廃合して13校に再編する。背景には約30年前より生徒数が半減した一方、学校数はほぼ同じで、小規模校が増加していることがある。2025年度は16校を7校に再編する予定だったが、2校は検討を継続中。28年度は12校を6校に再編する予定で、対象校はその3年前に公表される。

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