窓口縮小で増える無人券売機に課題 ビデオ通話で払い戻せず、1時間かかるケースも JR西
2022/09/08 17:00
「みどりの券売機プラス」などの遠隔対応を行うコールセンターの様子=尼崎市
JR西日本が新幹線や特急列車の券を対面販売する「みどりの窓口」の数を減らしている。同社はコールセンターとのビデオ通話機能で同等の機能を持たせた券売機「みどりの券売機プラス」を設置。新型コロナウイルス禍による在宅ワークへのシフトなどによる構造的な利用減にあえぐ中、経営効率化の有効策だが、利用客にしてみれば待ち時間や使い勝手に課題がある。
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7月上旬、松江市の山陰線宍道駅では男性(31)が「プラス」の前で途方に暮れていた。切符の払い戻しをしたいが、オペレーターの呼び出しから通話までに約20分。ビデオ通話ではやりとりは終わらず、4駅離れた松江駅の窓口に来るように指示された。約1時間を空費し「すぐに終わると思っていた。機械が一つしかないので、後ろに人が並ぶと気まずい」と話した。
プラスには駅の省人化を進めつつ、窓口と同等の機能を維持する狙いがある。従来の券売機では買えなかった通学定期や学割切符を購入できる他、早朝や深夜帯まで利用できるなど、一定の利便性があるとしている。
ただ、新年度が始まる春や週末は呼び出しから20分以上待つことも。6月、堺市の阪和線上野芝駅には「(画面の)目安表示に対して3~5倍の待ち時間が発生する場合がございます」とのおわびの紙が張られていた。
新型コロナ禍による利用者減は深刻で、JR西の昨年度の期末決算は2年連続の赤字。社員ボーナスの減額や役員報酬の返納に加え、沿線自治体との地方路線の見直し協議も始まっている。
約330駅あったみどりの窓口も3分の1に減らし、約400人分の人件費を減らす計画を2020年12月に発表した。
高齢者や障害者だけではなく、若い世代にも対面の窓口を求める声は根強い。しかし、近い将来に大量退職も控えているJR西は、プラスに置き換える方針を見直す考えはないとしている。一方で「待ち時間などのプラスの課題は認識している」として社内に対策チームを設け、オペレーター対応が必要な証明書の確認がなくても通学定期などが買える仕組みの検討を始めた。現在約100人いるオペレーターの数も増やす予定だ。
■兵庫県内は31駅に設置
JR西のホームページによると、兵庫県内にある145駅のうち、「みどりの券売機プラス」が設置されるのは31駅。このうち、三ノ宮、神戸、明石など利用者が多い11駅は対面販売のみどりの窓口もあって、「プラス」と併用されている。甲南山手(JR神戸線)、須磨(同)、英賀保(山陽線)、篠山口(JR宝塚線、福知山線)、福崎(播但線)などの20駅はみどりの窓口はなく、「プラス」が置かれている。
【みどりの券売機プラス】コールセンターとのビデオ通話機能を持たせたJR西日本とJR四国の指定席券売機の愛称。JR東日本も同型の「話せる指定席券売機」を導入し、2025年までに窓口設置駅を約7割減らす計画を公表している。JR西によると22年7月末時点で管内の約200駅に「プラス」が設置され、窓口が廃止された駅は約160に上る。