虎柄や肉球、お化けも… 仮装だけじゃない「ハロウィーン」 斬新スイーツ続々、業界の新たな商機に

2022/09/30 14:40

虎の肉球がモチーフのクッキー(コンラッド大阪)

 奇抜な仮装で盛り上がる秋恒例の「ハロウィーン」が近づく。収穫祭を兼ねた西洋の宗教行事だが、日本では近年、この時期に合わせて斬新なスイーツが登場。洋菓子業界にとってはクリスマス、バレンタインに次ぐ第3の書き入れ時となっている。今年も虎柄ロールをはじめ、ユニークな一品が専門店にお目見え。甘党の食欲を刺激している。(津谷治英) 関連ニュース 【写真】虎の皮をイメージしたロールケーキ リンゴに秋詰め込んで 「ポミエ」 レーブ・ドゥ・シェフ アンパンマンミュージアムでハロウィーン お面の工作、写真コンテスト、仮装キャラも登場

 黒、黄の2色のしま模様がインパクトを放つロールケーキ、尻尾のムース、肉球のクッキー…。大阪市北区のホテル「コンラッド大阪」40階のレストランに、「虎」をテーマにしたスイーツが並んだ。
 毎年、秋に開くハロウィーン・スイーツビュッフェ。今年の干支(えと)は「寅(とら)」で、さらに九星術の「五黄」と重なる「五黄の寅年」でもある。36年に1度訪れる希少な年にちなみ、虎柄を前面に押し出した。
 尻尾の黄色いつやはエアブラシで磨き、しま柄の黒色はチョコレートパウダーを焼いて工夫。米国人シェフのデイビッド・キャンベルさんは「リアル感を出すのに苦労した。しかし、試行錯誤を繰り返すことで、新たな技を編み出す機会になった」と満足そう。
 虎柄ロールケーキのデザインを見ながら思い浮かんだ。関西で虎といえば、黄色と黒色がトレードマークの阪神タイガースだ。デイビッドさんも通勤には阪神電車を利用するそうで、「毎日目にするデザインなので意識しました。関西を代表する濃厚な文化ですね」と笑う。黄と黒のスイーツに、虎党もほほが落ちそう。
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 かつての洋菓子業界は12月のクリスマス、2月のバレンタインデーに販売量のピークを迎えていた。これに今、ハロウィーンが第3の潮流を生みつつある。
 総務省の家計調査によると、スイーツ業界の売り上げは新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要で好調を維持。中でもハロウィーンを迎える10月の消費額は顕著で、1世帯当たりのケーキに使う支出は2021年は752円。コロナ禍前の19年の508円から1・5倍となっている。
 兵庫県洋菓子協会の佐野靖夫会長(69)は、10年ほど前から新たなブーム到来を実感してきた。「ディズニーランドやUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)が関連行事をしてくれ、世間がお祭りムードに包まれる。その流れにスイーツ業界も乗ってきた」
 自らも創業40年を超える「レーブドゥシェフ」(本店・神戸市垂水区)の代表で、9月から店内をハロウィーン色で染める。ショーウインドーにはメレンゲでつくった目玉をのせたモンブラン、パンプキンのお化けのチョコを飾った紫イモのクリームタルトと、この時期ならではの多彩なケーキが並ぶ。
 ハロウィーンは「Trick or Treat!(いたずらかお菓子か)」と、子どもたちが家々を訪ねておやつをねだる慣習もある。佐野さんは「昔の地蔵盆のようでしょう。子どもの笑顔が見たいと、配布用の焼き菓子を買って帰る老夫婦もいますね。夢があり、大事にしたい行事です」と説明する。
 さらに、スイーツ業界が盛り上がる背景に秋の季節を挙げる。カボチャ、イモ、ブドウ、クリと素材が豊富な時期。地元食材を重視する佐野さんは、兵庫特産のイチジクも積極的に生かす。
 「パティシエの創作意欲をかき立てる季節なんですね。スタッフも毎年気合が入り、いろんなアイデアを出してくれる。将来性のある市場と思います」

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