衰退の花柳界、客足戻らずとも…瞳に宿る覚悟 有馬温泉に15年ぶり10代芸妓

2022/10/01 05:30

先端が細い「笹眉」を塗るなど伝統の化粧を自ら行うさくらさん。優美な表情から心根の強さも伝わってくる=神戸市北区有馬町

 透き通った瞳。奥から放たれる視線の先には長年抱いてきた夢があった。 関連ニュース 【写真】この道約半世紀のベテランから踊りの確認を受ける 【写真】小磯の名画「化粧する舞妓」モデルの女性、30年ぶりに絵と再会 気さくに触れ合って 口コミで評判、有馬の「芸妓カフェ」

 兵庫県内で唯一、芸妓文化が残る有馬温泉で10代女性がおよそ15年ぶりに「入門」した。和歌山県出身のさくらさん(19)。凜とした表情で立ち、指や足の先まで神経を集中し演舞する。「いつも緊張するけれど、多くの人との出会いが私を成長させてくれます」
 幼い頃、テレビで見た芸妓、舞妓の美しさに心を奪われた。憧れが募り高校卒業後、その道に入る決心をする。
 一方、花柳界は衰退の流れにある。県内ではかつて城崎(豊岡市)や花隈、福原(神戸市)にもあったが、今では有馬のみ。有馬も1950年代に約160人いた芸妓は今、13人にまで減った。芸妓を束ねる「有馬検番」の代表、一七四さんは新入りを喜びつつ「ここは覚えることが多い厳しい世界。コロナ禍で客足も戻っていないしね」と話す。
 門をたたいたさくらさんを初めて見たとき、印象的だったのは「真っすぐな目」だった。何度も覚悟を聞いてきたが、さくらさんは、ただ「頑張ります」と踊りなどの稽古に励む。
 先輩からは所作や着付けも教わる。舞台がない時は裏方に回るなど多忙な日々を送る。「訪れた人たちへの気配りができ、話していて楽しいと思ってもらえたら」とさくらさん。「何より、踊りを通して幸せな気持ちになってもらいたい」と目を輝かせる。(坂井萌香)
    ◆      
 有馬検番では芸妓を募集している。問い合わせはTEL078・904・0402。
 また、有馬温泉の旅館などでつくる「有馬温泉伝統文化振興会」では芸妓文化を後世に残すため「有馬芸妓タニマチ」を創設。新人育成にも役立てる。TEL078・907・6082(平日午前9時半~午後4時)。

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