水質改善が裏目に…神戸・兵庫運河で「ナルトビエイ」目撃相次ぐ 狙いは増えたアサリやカキ
2022/10/14 17:10
兵庫運河の遊歩道沿いを優雅に泳ぐナルトビエイ=神戸市兵庫区材木町
「ナルトビエイ」と呼ばれるエイの目撃が、神戸市兵庫区の兵庫運河で相次いでいる。かつてはヘドロで汚染されていた水質が、何十年もかけて改善。アサリやカキが育つようになったと喜んでいたところ、貝類を食い荒らすエイが、えさを求めて舞い込んできた。エイは長い尾の付け根に毒針を持つといい、地元の漁協は警戒を強めている。(山脇未菜美)
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1メートル以上のヒレをぐわんと動かすと、のびやかに直線を進んでいく-。9月下旬の日中、兵庫運河の遊歩道で2時間ほど水面を眺めていると、14匹のエイが確認できた。早朝と夕方の活動時間帯であれば、さらに多くのエイが泳いでいるという。
「生き物がやって来るのは水質が良くなった証拠だから、うれしいのが一番。でも、せっかく育った貝たちを食べられるのは…」。複雑な思いを話す兵庫漁業協同組合の糸谷末二郎組合長(73)が、1枚の写真を見せてくれた。エイが、水中で自生するカキをくわえる姿だ。丈夫な歯で殻をかみ砕いて食べていた。
1899(明治32)年に完成した兵庫運河。高度経済成長期には100近い工場が立ち並び、水の汚れがピークに達した。水面には真っ黒な油が浮き、底はヘドロだらけ。夏にはメタンガスが発生した。1971年に「兵庫運河を美しくする会」が設立されてからは春と秋の年2回、川沿いや水底に眠るごみを引き上げるなど清掃。水質改善の効果があるアサリを育てるなどして、少しずつきれいになっていった。
ナルトビエイが運河に侵入してきたのは数年前からだ。エイは本来、海に生息し、二枚貝をえさにする。今のところ、食害は少なく、網を張って対処しているが、組合長は「100匹以上はいるんちゃうかな。同じ海の生き物なので大事にしたいけど、被害が深刻になれば駆除も考えないといけない」と話す。
20年以上、エイを研究する長崎大の山口敦子教授は、エイが侵入してきた理由を、沿岸部のえさがなくなってきたからではないかと推測する。9月に兵庫運河を視察した際には、運河の岸壁に貝がたくさん付着していたといい、「温度や塩分量などの環境がナルトビエイが生息できる条件に合ったんでしょう」と話す。
ただ、ナルトビエイ自体の個体数も近年は駆除されて減っており、「ネットを敷くなどしてうまく共存していければ」と強調する。越冬する際は水深が深い場所に移動するといい、運河にいるとみられるのは長くとも10月下旬ごろまで。