目利きバイヤーが推す、淡路のお香や豊岡のかばん…兵庫の特産品を富裕層にPR 都内でキャンペーン
2022/10/16 06:00
バイヤーが選んだ兵庫の特産品が並ぶ特設コーナー=東京ミッドタウン
兵庫県が首都圏の富裕層向けに特産品を売り込む新たなキャンペーンを展開している。舞台は高級感あふれる東京・帝国ホテルの土産店や六本木の大型複合施設「東京ミッドタウン」のセレクトショップ。目利きのバイヤーらが選んだ工芸品を販売し、背景に思いを巡らせて産地にも足を運んでもらう狙い。プロの目線で、地場産品の新しい魅力を掘り起こす試みの成否は-。(末永陽子)
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東京ミッドタウンの「THE COVER NIPPON(ジカバー・ニッポン)」。全国各地の食器や雑貨、食品がそろう。その中で、買い物に訪れた50代女性の心を射止めたのは淡路島産のお香だった。
香りをつくる職人「香司(こうし)」14人がそれぞれの感性で生み出した。日本人になじみのある「桜」や「白檀(びゃくだん)」のほか、珍しい「珈琲(コーヒー)」や「抹茶」も。女性は「パッケージもすてき。淡路島がお香の産地とは知らなかった」と笑顔を見せた。
同店を運営する「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」は都内に4店舗を持つ。県の委託を受け、複数の店舗で7月から兵庫の地場産業に焦点を当てたキャンペーンを展開中だ。
「THE COVER-」では、入り口すぐの特設コーナーを中心に約100品を販売。豊岡のかばんや三木の包丁、播州織のシャツ、有馬籠…と特産品ばかり。売れ筋はお香や食器で「毎日のように売れる」という。
商品を選ぶ腕利きのバイヤーは作り手の背景を深く知ろうと、直接話を聞いたり工房をリモート見学したりもした。マネジャーの松井悠子さんは「面積の広い兵庫の工芸品は多様性に富む。どれも職人の高い技術を感じた」と魅力を語る。
店には鋭い鑑識眼を持つ常連客も訪れる。赤穂特産の木綿織りじゅうたん「赤穂緞通(だんつう)」を飾ると、独特の文様やくっきりと浮かぶ絵柄などから一目で分かった人もいたという。松井さんは「ものづくりや美術に関心を持つ人は、産地に職人を訪ねるケースもある」と話す。
11月からは商品を入れ替えて第2弾を始める。
■アンテナショップ3月に閉店 企業に再開求める声
兵庫県が新たにキャンペーンを仕掛けた背景には、2025年に開催される大阪・関西万博がある。
県は行財政運営方針見直しの一環で、東京・有楽町で食品や酒などを販売していたアンテナショップ「兵庫わくわく館」への補助金を打ち切った。同館は今年3月に閉店。一方で、万博に向けて兵庫のブランド力をアップさせようと、拠点をつくらず、プロの手を借りてPRする作戦にシフトした。担当者は「歴史や文化に興味を持ってもらえる商品を提案し、地元への誘客につなげたい」と意気込む。
ただ、都心にアンテナショップを求める声は今も根強い。県内菓子メーカーの担当者は「関西出身者以外のファンも多く、首都圏で商品のリピーターが広がるきっかけになっていた」と残念がる。ある酒造会社は「東京での販路が少ない企業にとって、アンテナショップはまず商品を知ってもらえる重要な拠点だった」としている。