イニエスタの足は「赤ちゃんみたい」 神戸・長田の技、世界の技を支える 靴型メーカー「奇跡的」一発OK

2022/10/29 11:33

自身の新ブランド発表会でリフティングを披露するイニエスタ選手=9月8日、東京都新宿区、国立競技場

 サッカーの元スペイン代表で、J1ヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ選手が立ち上げたシューズブランドに、地元・神戸の匠の技が生きている。靴作りに欠かせない靴型を担ったのは、神戸市長田区にある専業メーカー大山の大山義勝社長(74)。手作業で足の幅や甲を測って仕上げた型は、本人から「履き心地がいい」と一発OK。フィールドでの華麗なプレーを支えている。 関連ニュース 【写真】「キャピテン」のサッカースパイク イニエスタが新ブランド立ち上げ サッカーシューズ、本社は神戸 名前には『縁(en)』入り イニエスタ、日本向け公式ファンクラブ開設 「スペインに勝ってほしい」W杯を前にエールも

(高見雄樹)
 イニエスタ選手は9月、サッカーシューズブランド「Capitten(キャピテン)」を立ち上げた。現役選手が自身のブランドを新設するのは異例で、自らスパイクを試合で使う。神戸市中央区八幡通4に基幹店を構え、11月上旬に本格オープンさせる。
 新ブランドのプロジェクトは約1年前に始まった。資金を融資する地元の神戸信用金庫を通じ、数々のプロスポーツ選手の靴を手がける大山さんに白羽の矢が立った。イニエスタ選手が神戸・長田の本社を訪れ、足の形を計測。最新の立体計測器を使いつつ、「手で測るのが基本」という大山さんはメジャーを手にイニエスタ選手の足と向き合った。
 ゴルフの石川遼選手や上田桃子選手らやサッカー選手の足を見てきたが、イニエスタ選手は「別格やった」と振り返る。「優しい足というか、きれいな足。赤ちゃんみたいな足と言ったらいいかな。ゴツゴツした足を想像していたので、サッカーをやっているように見えなかった」
 仕上がった靴型の「マスターモデル」には、足の指を骨折したことがあるイニエスタ選手への気遣いが。「小指の付け根部分に余裕を持たせ、かかとの後ろは締め付けてフィット感を高めた」と明かす。
 靴型を使って試作したシューズは通常、試し履きをした本人から微修正の要望を受けて数回は作り直す。ところが今回、修正の依頼はなく、大山さんは「一発OKは初めてで奇跡的。技術の積み重ねが実ったようだ」と喜ぶ。
 靴型メーカーは、神戸・長田の地場産業ケミカルシューズ製造に欠かせない。阪神・淡路大震災前、市内には15社ほどを数えたが、大量生産できる中国やアジアの後発メーカーの台頭で、今では2社に。国内でも計7社にまで減った。
 神戸の街に深い愛情を持つことで知られるイニエスタ選手は、自身のブランドに神戸のメーカーが関わることを喜んでいるという。神戸・三宮の基幹店ではスパイク(1万8150円~、子ども用1万4850円)のほか、ユニホームやTシャツなどを販売。専用サイトも開設した。
 同ブランドの企画・販売会社キャピテン(神戸市中央区)には、イニエスタ選手が取締役に名を連ねる。神戸信金の融資のほか、系列ファンドなどが年内に出資を予定。大手スポーツ用品店などにシューズの販路を広げる。
 高橋浩二社長(42)は「神戸発の世界ブランドを目指し、将来は株式上場も視野に入れたい」と話した。

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