「阿万の風流大踊小踊」ユネスコ遺産登録へ 南あわじで喜びの声「絶やさず次代につなぎたい」
2022/11/02 05:30
今年9月に亀岡八幡神社で奉納された風流踊の「小踊」=南あわじ市阿万上町(阿万風流踊保存会提供)
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録を勧告された民俗芸能「風流踊」。24都府県41件の中には、「阿万の風流大踊小踊」が含まれる。兵庫県南あわじ市阿万上町の亀岡八幡神社で、氏子の住民らが400年以上継承してきた。踊りと衣装が多彩な一方、少子高齢化で担い手の確保が課題になっている。保存会の役員は「子どものときから慣れ親しんだ重要な儀式。絶やさず次代につなぎたい」と願う。
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阿万の踊りは毎年9月の祭礼で、豊作を祈願し奉納される。雨乞いの願いがかなえられた後の「願解き」の意味がある。大踊は室町末期ごろ、小踊は江戸中期に始まったとされる。起源や衣装、音頭、踊りが異なる踊りが、同じ地域で伝わってきた点で貴重という。
いずれも「講」と呼ばれる担い手組織で代々、引き継がれてきた。戦時中に食糧難などのため踊りが途絶えたが、戦後に復活した。
約60年前には上町地区の住民が中心となって「阿万風流踊保存会」ができ、年に3回「講会」を開いて練習を続けている。
保存会の佐渡達史会長(72)によると、かつては家ごとに所属する講が決まり、大踊に参加する子どもは長男に限られた。だが近年は少子高齢化が進み、決まり事を変えてでも担い手を確保する必要が生じている。「親子で別の踊りに参加することも普通になった。上町出身で別の地域に暮らす人が参加するケースも増え、柔軟に変化してきた」と佐渡会長は振り返る。
保存会は2020年から年1回、地区内の家に広報紙を配り周知に努める。佐渡会長は「ユネスコ遺産への登録で知名度も上がる。将来的に移住者や上町以外の阿万の人も担い手として手を挙げてくれれば、伝統は生き続ける」と話す。
南あわじ市の守本憲弘市長は1日、「大変喜ばしい。本市の伝統文化の水準の高さを示し、ユネスコ遺産への登録となれば地域の誇り、活力の源になる」とコメントした。(西竹唯太朗、吉田みなみ)