神戸マラソン、帰ってきた「のぞみちゃん」 大会ゲストに田中希実さん、母・千洋さんはランナーで参戦
2022/11/20 14:05
スタート地点でランナーを応援する田中希実(右)と有森裕子さん=神戸市中央区加納町6(撮影・秋山亮太)
新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年続けて延期となったため、3年ぶりに開催された20日の神戸マラソン。昨年の東京五輪陸上女子1500メートルで8位入賞を果たした田中希実(のぞみ)=豊田自動織機=が大会ゲストとしてスタートセレモニーに登場した。公式ホームページ(HP)に「市民マラソンは、ランナーと応援する人、そして町が一体となって完成するもの」とメッセージを送った田中。きょうは「応援する人」だ。
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■母は最強のママさんランナー
「頑張ってください!」「行ってらっしゃい」「楽しんできてください」
スタート地点となる神戸市役所前の設置台に立った彼女は声を振り絞り、ほほ笑みながら懸命に手を振り続けた。時折、「のぞみちゃん!」との声が飛び、手を振って応じたのは約2万人のランナーたちだ。
2011年に創設され、2年のブランクを経て迎えた第10回の記念大会。ゲストランナーとして招かれた過去の優勝経験者の中に、第3回大会を制した田中の母親、千洋(ちひろ)さんの名前もあった。
最強のママさんランナーとして鳴らした千洋さんは第1回、第2回と2大会連続で2位だった。満を持して挑んだ第3回大会は70回目のフルマラソン。2時間36分53秒の大会新記録をマークして初優勝を飾った。公式HPに「母の応援のために街を走り回った思い出があります」とつづった田中。「優勝しそうとなった際には、電車で先回りしながら母を追いかける高揚感で、走っている本人と同じくらい楽しんだ記憶があります」と振り返った。
■かつては関係者エリアに入れなかったけど
2013年。当時、田中は中学2年生で、全国中学校体育大会の1500メートルで4位に入るなど頭角を現していた。脚力は十分。懸命の先回りが成功したのか。中盤以降から独走態勢を築き、両手を大きく掲げてフィニッシュした千洋さんに向かって駆け寄った。ところが…。
心地よい汗をぬぐう千洋さんの姿を写真に収めようと近づくと、関係者しか入場できないゲート前で係員に止められた。関係者用パスがなかったからだろう。田中は泣きそうな表情を浮かべていた。
あれから9年。関係者エリアに入れなかった中学2年生はオリンピアンに成長し、1500メートルの日本記録保持者となってスタート地点の設置台に登壇した。まだ、23歳。かつて、優勝時のインタビューで「いつか子どもがマラソンに出るとき、ライバルとして走れたら」と目を輝かせた千洋さんとともに、母子で挑む神戸マラソンを楽しみに待ちたい。(大原篤也、井川朋宏)
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