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1歳半の昌子源。見事なキックに、母直美さんは「思わず写真を撮った」=家族提供
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1歳半の昌子源。見事なキックに、母直美さんは「思わず写真を撮った」=家族提供

 神戸電鉄の唐櫃台駅(神戸市北区)から続く上り坂の先に、DF昌子源(25)の実家はある。

 「いろんなものを壊して申し訳ないと、今になって思う。親から請求が来ないのが救いかな」

 6畳の和室で、源少年は暴れ回った。1歳半にして、力強いシュートフォームを披露した才能の持ち主。布団の上で叫びながら、自分で蹴ったスポンジ製のボールに飛びついた。小学校に進んでから、GKごっこを毎日飽きずに3年間。2学年上の姉楓さん(27)は「ダイブすることに快感を味わっていた」と笑う。

 3年生からフレスカ神戸で本格的にプレーし、本拠地はグラウンドに移った。ピクシー(妖精)ことストイコビッチに憧れ、ゴールを次々と奪う一方、「この子、サッカー好きなん?」と母直美さん(55)の疑念は膨らんだ。よその子は夜な夜なリフティングしているのに、愛息はテレビゲームに夢中。しかも、サッカーとは関係ないソフトばかりだった。

 サッカー指導者の父力さん(54)は「楽しそうならいい」と干渉しなかった。当時、J1神戸のユース監督などを務めて多忙を極めていたが、たまに息子と夕食を囲むと、成長を感じていた。

 一番は記憶力。毎回試合内容を聞くうちに、克明に覚えて帰ってくるようになった。ピッチ全体を俯瞰(ふかん)する力、コーチング能力が自然と発達していた。

 実は食卓での会話は、父にとって何物にも代え難い時間だった。

 大学を出て指導者2年目の冬、交通事故で教え子の男子児童を失った。試合準備の手伝いに来てもらい、帰した直後だった。「『いってらっしゃい』『ただいま』と言えるのがどれだけ幸せか」。ある保護者の言葉が耳から離れなかった。

 子どもが一日をどう無事に過ごしたのか、純粋に知りたい。そんな父の思いを知る由もない源は「一緒に食事をした記憶があまりないから、楽しかったよとか、何げない会話がすごくうれしかった」と、その日の活躍を喜々として報告した。

 今でも、父とは自身のプレーを振り返りながらサッカー談議に花を咲かせる。日本代表になっても、その距離感は変わらない。(有島弘記)

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