スポーツ

  • 印刷
子どもに打撃を指導する宝殿スピリット監督の山口哲治さん=加西市網引町
拡大
子どもに打撃を指導する宝殿スピリット監督の山口哲治さん=加西市網引町
高校日本代表に選ばれた山口さん(右)と松井秀喜さん(山口さん提供)
拡大
高校日本代表に選ばれた山口さん(右)と松井秀喜さん(山口さん提供)

 1992年夏。甲子園球場が、星稜高校(石川県)の松井秀喜選手への5連続敬遠でどよめいた。同級生として同じグラウンドに立ち、星稜のエースだった山口哲治さん(45)=兵庫県加古川市=が、少年野球チームの監督を務めている。あの敬遠を目の当たりにした山口さんは、子どもたちに「思いっきり振ってこい」と背中を押す。プロを目指しながら、かなわなかった夢。栄光と挫折の体験を指導力に変え、20日に開幕する「神明あかふじ米第32回兵庫県ジュニア軟式野球選手権大会」に挑む。

 山口さんは、石川県かほく市出身の左腕投手。星稜では、60人以上の部員の中で1年生からエースナンバーを背負い、松井さんとともに注目を浴びた。投打の柱として3年間で4度甲子園に出場。社会人チームで8年間プレーした。

 引退後も野球への情熱は衰えず、アマチュア野球を続けた。6年前、長男が所属する「宝殿スピリット」(加古川市)の監督に就いた。

 山口さんにとって印象深いのは、甲子園の「5打席連続敬遠」の試合だ。3点を挙げた明徳義塾は逃げ切りを図り、4番の松井さんの全5打席を敬遠する異例の作戦に出た。

 3番を打っていた山口さんが、3安打を放ってチャンスをつくったことも、皮肉にも敬遠につながった。勝負を望む観客からの罵声が響く中で、山口さんの最後の夏は終わった。「やりきれなくて、気付いたら涙が出ていました。負けたと信じられなかった」

 あれから27年。宝殿スピリットの子どもたちには、勝ち負けよりも、思いきりプレーする大切さを説く。「スクイズすれば確実に点を取れる場面もある。でも『思いっきり振ってこい』と伝えます。それがその子のためになるなら、結果よりも大事」

 普段は温厚だが、時には厳しく叱る。「子どもたちには僕を超えてほしい。つい期待してしまうんです」。5月の「神明あかふじ米」大会東播地区予選の決勝で、宝殿スピリットは逆転勝利。28年ぶりの優勝で、本大会に駒を進めた。

 もう一つ、山口さんが選手に伝えるのは「諦めないこと」。高校時代、日本代表にも選出されるなどプロのスカウトからの評価は高く、プロ志望を表明した。しかし、松井さんが巨人からドラフト1位で指名されたが、山口さんは呼ばれなかった。「とにかく恥ずかしくて、情けなかった」

 それでも、山口さんはプロを目指し続けた。社会人野球神戸製鋼(加古川市)の門をたたき、肩の故障で投げられなくなる26歳まで現役を続けた。

 その年のオフ、松井さんと再会した際に「プロで対戦するか、一緒のチームでプレーしたかった」と言われたという。山口さんは「松井のことだから気を遣ったのかも」と苦笑する。「子どもたちには諦めず、仲間と助け合って全力で戦い抜いてほしい。あかふじ大会を通じて成長する姿が楽しみ」と笑顔を見せた。(小森有喜)

スポーツの最新
もっと見る

天気(8月18日)

  • 34℃
  • ---℃
  • 20%

  • 35℃
  • ---℃
  • 20%

  • 35℃
  • ---℃
  • 10%

  • 37℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ