神鋼・山中、ラグビーW杯へ 口ひげ育毛剤でドーピング、15年の落選乗り越え

2019/08/29 22:13

W杯日本代表に選ばれ、社員から祝福される神戸製鋼の(手前右から)山中亮平とアタアタ・モエアキオラ=29日午後、神戸市中央区脇浜海岸通2、神戸製鋼所神戸本社(撮影・辰巳直之)

 29日に発表されたラグビーワールドカップ(W杯)日本代表。31歳で初めて選ばれた神戸製鋼の山中亮平は、ドーピング違反で2年間の資格停止処分を受けた経験を持つ。楕円(だえん)球に触れることすら許されない、どん底の日々。失意の時を温かく見守り、再起への道筋をつけたのが、当時神鋼ゼネラルマネジャー(GM)の故平尾誠二さんだった。「帰って来られる場所をつくってくれた。平尾さんも喜んでくれていると思う」と代表入りをかみしめた。 関連ニュース 【写真】強化合宿を終え、代表入りに意欲を見せる神鋼WTBモエアキオラ 【写真】強化合宿を終え、チームの成長に手応えを示す日本代表のリーチ主将 ラグビーW杯の魅力体感 神戸・メリケンパークに「ファンゾーン」

 大阪市出身。東海大仰星高(大阪)、早稲田大で日本一を経験し、若いころから逸材と呼ばれていた。順風満帆だったラグビー人生が暗転したのは、2011年の神鋼加入直後だった。日本代表合宿中のドーピング検査で、禁止薬物の陽性反応を示した。口ひげを伸ばすために使用していた育毛剤が原因だった。
 悪意はなく完全な不注意だったが、2年間の資格停止処分を受け、練習参加も禁じられた。神鋼とはプロ契約だったため解雇の可能性もあった。だが、面談したGMの平尾さんは「社員で残るというやり方がある」と、ラグビー部は退部する一方、社員として会社に残留する道を用意した。
 「これまでラグビーしかしてこなかった。何も分からなかった」という山中は総務部に配属され、電話対応などの事務を一から学んだ。仕事が終わってもできる練習は、ウエートトレーニングだけ。それでも、平尾さんは折に触れて山中を食事に誘い、「お前には期待しているから」と声を掛けてくれたという。
 処分が明けた13年5月に復帰。15年W杯は最終選考で落選したが、腐らなかった。昨春、山中はスマートフォンのメモに「W杯に出る。出るために神戸製鋼で活躍する」と覚悟を書き込んだ。司令塔のSOからフルバック(FB)にポジションを移し、神鋼の18大会ぶり日本一に貢献した。紆余(うよ)曲折を経た31歳は、31人のメンバー発表の最後に名前を呼ばれた。
 回り道をしたが「社会人として、人として成長できた」と、今は“空白の2年間”を前向きに語る。その恩人は16年に53歳の若さでこの世を去った。「日本代表での姿を見せることが平尾さんへの恩返し。1試合でも多くレギュラーとして出たい。出ます」。直接伝えられなかった感謝は、W杯のフィールドで伝える。(山本哲志)

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