大海原に夢みる五輪制覇 セーリング女子470級代表・吉岡美帆
2020/01/01 17:00
セーリングの世界選手権女子470級で東京五輪代表に決まった吉田愛(左)、吉岡美帆組=2019年8月9日、神奈川県江の島沖
荒れる波間も凪(な)いだ海も、風の力だけで突き進む。シンプルで奥が深いセーリングの女子470級に挑むのが、29歳の吉岡美帆(ベネッセ、兵庫県立芦屋高-立命大出)だ。大海原に日本勢初の五輪制覇の夢をみる。
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全長4・7メートルの2人乗り小型ヨットで争う種目。10歳上の吉田愛(ベネッセ)とのペアで臨んだ2016年リオデジャネイロ五輪は5位だった。3度目のひのき舞台を迎えたスキッパー(かじ取り役)の相方に対し、艇のバランスを取るクルーの吉岡は初出場。想像以上の緊張に襲われ、ヨットから落ちた。「いつもはしないミス。引きずり、別のミスにつながった」と力を発揮できずに終わった。
悔いを糧に、吉岡はランニングにバイク、ボートをこぐ動作のローイングなどで体力強化に励んだ。持久力がなければ、レース途中に集中力が切れ、ミスを招くからだ。外国勢に劣らぬ177センチの長身と、海外転戦で身に付けた勝負度胸も生かし、18年の世界選手権では日本女子として初優勝。19年大会では銀メダルを手にし、東京五輪の代表に内定した。
祖母の家が京都府京丹後市にあり、すぐそばの日本海に幼い頃から親しんできた。「美しい帆船のように」との願いを込め、付けられた名前。体現するかのように日本を代表するセーリング選手となった今、「この名前が誇らしい」と胸を張る。
20年東京五輪の舞台は、いつも練習している神奈川・江の島沖。風の傾向や波の立ち方は、体が覚えている。メダル獲得の期待もかかるが「プレッシャーになることはなく、素直に、頑張ろうという気持ち」と穏やかに笑う。「今までしてきたことのすべてをオリンピックで出す」と4年前の雪辱を期す。(藤村有希子)
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【セーリング】帆(セール)に風を受けながら海上の艇を進め、設置されたブイを決められた順序で回る。着順を点数化し、総得点が低い方が上位となる。470級は、セーリングの1種目で、名称は競技で使用する全長4.7メートルの2人乗り小型ヨットに由来する。日本では最も盛んな種目。
【吉岡美帆(よしおか・みほ=セーリング女子470級)】1990年8月27日生まれ、広島県出身。小学4年から兵庫県西宮市に住み、その後同県川西市へ。県立芦屋高1年で競技を始め、立命大を経て2013年から吉田愛(ベネッセ)と組んで成長。五輪は16年リオデジャネイロで初出場。吉田からの愛称は「トッポ」。ベネッセ。177センチ、70キロ。29歳。