「打倒、女王」(9)理想の流れ、前半折り返し 06年兵庫国体バスケ少年女子

2020/06/03 10:33

福岡戦第2クオーター、兵庫の沢田悠が跳躍力を生かしてジャンプシュート

 10-15。2回戦の第1クオーター(Q)は、ビハインドを5点にとどめた。「満点の滑り出し」と兵庫コーチの高松一人。 関連ニュース 陸上男子800m、1年生梅田(須磨学園)が1500mと2冠 「切り替えに自信」終盤一気<県高校総体> 陸上女子七種競技、本多(園田)が圧勝 苦手なトラック種目、冬場に鍛錬「成長できた」<県高校総体> <県高校総体>陸上女子七種、本多が兵庫高校新V 12競技で熱戦

 制限時間の24秒を目いっぱい使う攻撃が、効果を生んでいた。
 試合全体を通して自分たちの攻撃回数は減ってしまうが、同時に、福岡に与える時間も減る。それが狙いだ。
 「ロースコアの競り合いに持ち込めば兵庫に勝機がある」と、監督の吉川公明は考えた。
 第2Q、滝井亜里沙(園田高)に代わって、沢田悠(市尼崎高)がボールを運び始めた。
 怒られ役といえば滝井だが、国体メンバーで唯一、監督吉川と同じ市尼崎高に属する沢田も、似たような役回りだった。
 実は沢田も、国体直前合宿での「寝坊組」。夕方に部屋でつい眠ってしまい、以後の練習では「何をしても怒られる」という憂き目に遭った。
 そんな「もう一人の怒られ役」は171センチの上背に似合わず俊足。最大の武器は跳躍力を生かしたジャンプシュートだ。「ドリブルから真上に跳べる」と吉川は評する。
 尼崎市立小園中ではバスケットの傍ら、市内陸上大会の走り高跳びに出場し、大会記録にあと1センチと迫った実力を持つ。
 「抜かれるのも怖い」と離れ気味に守る福岡のエース、森ムチャ(中村学園女高)の目前。
 「やったろう」。気迫あふれる沢田が3点シュートに挑んだ。20-18と逆転に成功した。
 続いて3点ラインのやや内側。ドリブル、細かなフェイクから、垂直に跳び上がった。ボールは高い弧を描き、リングにすっぽりと収まった。
 前半は24-26で終了。
 理想の流れで折り返した。
 だが後半。
 ガードとして再登板した滝井のパスが、読まれ始めた。
=敬称略。肩書、所属は当時=
(藤村有希子)
【あらすじ】2006年秋の兵庫国体バスケットボール少年女子。選抜メンバーを組んだ地元兵庫は、最大のヤマ場と捉えていた強豪・福岡との2回戦に挑んだ。

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