無名の高校時代からドラ1位 近大・佐藤のルーツ
2020/10/27 17:20
交渉権を獲得した阪神の帽子をかぶり、メガホンを持ってポーズをとる近大の佐藤輝明内野手=26日午後、大阪府東大阪市
26日のプロ野球ドラフト会議で4球団から1位指名を受け、阪神が交渉権を獲得した近大の佐藤輝明内野手(21)=兵庫県西宮市出身。無名だった仁川高時代から一転、大学進学後は本塁打を連発し、学生球界屈指のスラッガーにのし上がった。虎党が熱視線を注ぐ逸材。そのルーツとは-。
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ドラフト会議開始の数時間前のこと。神戸市中央区の兵庫県柔道連盟事務局で、事務局長の石角(いしかど)洋子さんが声を上げた。
「あの佐藤選手って、佐藤先生の息子さんなの!?」。佐藤先生とは、関学大人間福祉学部准教授の佐藤博信さん(53)。日体大柔道部出身で、チェコスロバキア国際大会や講道館杯の男子86キロ級で優勝するほどの選手だった。
石角さんは旧姓坂上で、1992年バルセロナ五輪柔道女子72キロ超級の銅メダリスト。現役時代に遠征などでよく顔を合わせていた博信さんについて「高身長ながら背負い投げが得意だった」と語る。
高い身体能力は息子に受け継がれた。博信さんは「パワーはあった方がいい。ウエートトレーニングしやすい環境を」と、自宅にベンチプレスの器具やダンベルなどを用意した。佐藤選手は仁川高2年から筋トレに励むようになり、本人も「あれから体つきが変わって、ホームランを打てるようになった。ターニングポイントの時期」と振り返る。
博信さんが指南したのは、身体面だけではなかった。「日常生活で自分に負けていては、試合に勝てるわけがない」。時間や約束を守る。学業のリポートは期日までに提出する。グラウンド外でも自らを律するように、言い聞かせてきた。
指名後の会見。佐藤選手も父に教わった内容を明かした。「勝負ごとには相手がいる。相手のことはコントロールできない。だから自分にできることに集中して、一生懸命取り組むようにと」
柔道と野球。競技は違えど、大切な部分は共通している。導いてくれた父に、息子は「今まで支えてくれてすごく感謝している」とメッセージを送った。(藤村有希子)