「生きるか死ぬかだ」阿部一二三と丸山城志郎、柔道五輪懸け史上初のワンマッチ方式

2020/12/10 18:23

昨年11月のグランドスラム大阪大会男子66キロ級決勝でライバル丸山城志郎(左)を破り、優勝を決めた阿部一二三=大阪市の丸善インテックアリーナ大阪(撮影・鈴木雅之)

 柔道男子66キロ級の東京五輪代表決定戦は13日、東京・講道館で行われ、元世界王者で神戸市兵庫区出身の阿部一二三(23)=パーク24、神港学園高-日本体育大出=が、新王者の丸山城志郎(27)=ミキハウス=と対決する。男女14階級で唯一日本代表が決まっておらず、勝者が切符を得る。1試合限定の「ワンマッチ」方式で五輪代表を決めるのは日本柔道史上初。阿部は周囲に「生きるか死ぬかだ」と決意を伝えている。 関連ニュース お兄ちゃんが「頭ポンポンしてくれた」 世界選手権Vの柔道・阿部詩 3連覇逃した阿部一二三「試練はいっぱいあるが、乗り越えられない試練しか…」 阿部詩「油断せず五輪代表を勝ち取る」 世界柔道2連覇から一夜明け

(藤村有希子)
 代表レースでの両者の成績は拮抗(きっこう)している。直接対決では阿部3勝、丸山4勝。阿部は昨夏の世界選手権東京大会まで丸山に3連敗した。いずれも延長の末に技ありを奪われる惜敗だった。
 だがその後はグランドスラム(GS)大阪大会で宿敵を破って優勝し、今年2月のGSデュッセルドルフ大会も制して国際大会2連勝。五輪代表争いで盛り返し、全日本柔道連盟強化委員会の評価で丸山に並んだ。
 二人の争いに決着がつく予定だった4月の全日本選抜体重別選手権は、新型コロナウイルス感染拡大で延期に。そんな苦境も23歳の柔道家は糧とした。妹で東京五輪女子52キロ級代表の詩(20)=日体大、夙川高出=とともに、200段以上続く階段でダッシュを繰り返すなど、足腰やスタミナを強化してきた。
 阿部の最大の武器は「体の強さ」と恩師の神港学園高総監督、信川厚さん(55)は説明する。「相手にガンとぶち当たっていく『剛』の背負い投げ。前に出る柔道だから、それがより生きてくる」
 幼い頃から、消防士で元競泳国体選手の父浩二さん(50)と走ったり、メディシンボールを投げたりしてつくられた肉体は、今季の鍛錬でパワーアップした。浩二さんが息子について「体が常に引き締まっている状態」と言えば、母の愛さん(48)は「じたばたしていない。覚悟が決まっている顔」。心身はすでに整っている。
 2017年、阿部が世界選手権で初めて金メダルを手にした20歳の夏。信川さんは喜びながらも、あえて教え子を鼓舞した。「俺が首に掛けてほしいのはそのメダルじゃないよ」。阿部は応じた。「分かっています」
 視線の先には、五輪の金メダルしかない。そのために避けて通れない決闘をもうすぐ迎える。
 「しっかりと勝つ準備をしてきた。豪快な一本を取りにいく自分の柔道をして勝ちきり、オリンピック代表内定を必ず決める」【阿部一二三(あべ・ひふみ=柔道男子66キロ級)】1997年8月9日生まれ、神戸市兵庫区出身。神港学園高2年の2014年、男子史上最年少の17歳2カ月で講道館杯全日本体重別選手権を制覇。日本体育大2年の17年に全日本選抜体重別選手権を2連覇し、18年には世界選手権2連覇。得意技は背負い投げ。パーク24。168センチ。23歳。
【丸山城志郎の話】 注目をいただいていることを重々承知している。強い気持ちで闘う姿を皆さまにお伝えできたらと思う。

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