
ラグビーの全国大学選手権を制して、天理大が初めて大学日本一の称号を手にした。昨年の8月中旬から9月上旬にかけて、寮生活を送る部員が新型コロナウイルスに感染。クラスター(感染者集団)を経験しながらも、チームは一丸となって悲願を成就させた。
約1カ月の活動休止に追い込まれ、寮は一時閉鎖となった。感染者が次々に増え、対応に追われた。小松節夫監督は「どういう形で、いつウイルスが入ってきたのか分からない」と振り返った。一般の学生に対する誹謗(ひぼう)中傷もあり、心を痛めた。
関西大学リーグは開催可否が検討された。4年生は公式戦がないまま引退する可能性もあった。落ち込む選手を、松岡大和主将(甲南高出)は前向きな言葉で支えた。「大会があることを信じて頑張り続けよう」
例年より圧倒的に実戦経験が少ないチームは、試合をこなすごとに自信を深めていった。関西大学リーグで5連覇を達成。重圧から解放されたかのように、全国の舞台でも躍動した。
15人が体を張って献身的に動き、準決勝では、関東大学対抗戦王者の明大を撃破。決勝では、前回大会準決勝で大敗を喫した早大に雪辱した。
松岡主将は「たくさんの人に迷惑をかけた。感謝の気持ちだけでなく、日本一を勝ち取ることで恩返ししたい」。その思いは結実した。
