柔道・阿部一二三 きょうだいで挑む東京五輪「2人で一番、輝く」
2021/01/01 05:30
柔道男子66キロ級代表決定戦 丸山城志郎(左手前)を攻め続け勝利した阿部一二三=2020年12月13日、東京・講道館(代表撮影)
新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期された東京五輪が、2021年7月23日に開幕する。コロナ禍で練習環境が制限される中、アスリートは与えられた時間を生かして勝負の夏へ準備を進めている。
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回り道をしながら、日本のお家芸を背負って立つ男になった。
神戸市出身、柔道男子66キロ級の阿部一二三(ひふみ)(パーク24、神港学園高-日本体育大出)は昨年12月、東京五輪代表決定戦で宿敵の丸山城志郎(ミキハウス)を倒した。前へと攻め続けた24分の激闘の果てに、夢舞台の切符が舞い込んだ。
早くから「自国五輪の星」と注目を浴びながら、2018年秋からは丸山に3連敗を喫した。世界選手権の3連覇も阻まれ、五輪出場に黄信号がともった。
だが、崖っぷちからの反撃こそが阿部の真骨頂だった。
「絶対にやられっぱなしでは終われない」と19年秋のグランドスラム大阪大会で丸山を破って優勝。国際大会を2連勝し、五輪代表レースで盛り返した。コロナ禍で代表最終選考会が延びても心は折れなかった。
少年時代。試合で女の子に秒殺され、その後の対戦でもなかなか勝てなかった。悔しさを晴らそうと、消防士の父浩二さんと一緒に走り込み、重いボールを投げて体を鍛えた。
「強くなりたい」という思いは、あの頃から変わらない。鋼の肉体をまとった23歳の若武者は、五輪優勝よりも厳しいといわれる日本代表争いを制し、たくましいハートも備わった。「この争いを勝ちきってこそ、本当の強さ」。回り道は無駄ではなかった。
女子52キロ級の妹、阿部詩(うた)(日本体育大、夙川高出)とともに初めてオリンピックに挑む。「きょうだい2人で一番、輝きたい」と見据えるのは金メダル。身上の「前に出る柔道」を全世界に発信する。(藤村有希子)