五輪柔道「日韓の懸け橋に」 在日コリアンの韓国代表・金知秀 阿部詩とも同級生
2021/07/17 14:15
夙川高時代に同級生だった金知秀(左)と阿部詩=2018年2月、神戸市の同校
26日に行われる東京五輪の柔道女子57キロ級に兵庫県姫路市出身の在日コリアン、金知秀(キムチス)(20)=山梨学院大=が韓国代表として出場する。在日選手が柔道女子代表になるのは五輪史上初。韓国籍の選手として現実に直面しながらも、在日であることに誇りを持つようになり「日韓の懸け橋になれたら。表彰台の一番上に立ちたい」と思いを膨らませる。(藤村有希子)
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在日2世の父金徳諸(キムドクジェ)さん(70)と、20代で韓国から来日した母李守●(イスギョン)さん(49)との間に生まれ、姫路市で育った。競技を始めたのは6歳。柔道経験者の父が自宅倉庫を改装して作った道場で、ときには父と組み合って腕を磨いてきた。
意志の強さは人並み外れている。「負けたら死ぬ。その覚悟で戦え」という父の教えが体に染みついているからだ。
姫路市立高岡西小学校時代、後に夙川高で同級生になる東京五輪女子52キロ級代表の阿部詩(日本体育大)を破ったこともある。日本のエースに成長した阿部は「知秀は柔道も気持ちの面も、全部が強かった。私は1分以内に負けていた記憶がある」と懐かしむ。
実力を伸ばし、全国高校総体を1年生で制した金。シニアの国内大会にも目を向けたが、外国籍のため出られない大会があると知った。それでも韓国籍のまま五輪を目指すことを決意。3年生で初めて韓国代表として世界選手権の切符を手にした。
韓国代表の活動が増え、同国と日本を行き来するうちに「日韓友好の手助けになれたら」と両国をつなぐ意識が芽生えた。
柔道をお家芸とする日本仕込みの技で年々強さを増す。「オリンピックに出て金メダルをとる」。小学生の頃、卒業文集にしたためた夢の実現へ、舞台は整った。
(注)●は「土」の右に「向」の「´」なし