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専属コーチの岩見一平(左)が引っ張るチューブに負けず前進する大矢勇気。全ては金メダルのため=神戸市北区、しあわせの村(撮影・吉田敦史)
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専属コーチの岩見一平(左)が引っ張るチューブに負けず前進する大矢勇気。全ては金メダルのため=神戸市北区、しあわせの村(撮影・吉田敦史)

■走法と肺機能磨き頂点へ挑む

 大一番も蒸し暑いレースになるのだろうか。

 東京パラリンピック陸上男子100メートル(車いすT52)の世界ランキング2位、大矢勇気(ニッセイ・ニュークリエーション)は炎天の8月初旬、競技仲間と練習をしていた。

 神戸市北区の「しあわせの村多目的運動広場」。本番の東京・国立競技場と同じ舗装ゴムが使われ、兵庫県障害者スポーツ協会の協力で6月から月1度、感触を確かめていた。

 「順調ですね」

 蒸れるヘルメットを外し、大粒の汗をぬぐう。その横で、専属コーチの岩見一平はいつものようにスマートフォンに計測タイムを打ち込み、「ええ感覚を体に植え込んでおきましょう」と声を掛けた。

 岩見は肉体強化に加え、競技用車いす「レーサー」の効率的な動かし方も教える。腕の長さから計算した座面の位置や高さ、膝の置き場所…。ミリ単位の調整は、かつてミニバイクのレースに参戦した岩見の経験則に基づく。

 「スペシャリスト。全部お任せ」と大矢は笑う。

 今年4月、東京仕様の走法を固めた。精密機械のように腕の回転精度をさらに高めると、記録にも表れ、7月10日の兵庫選手権で16秒75。アジア人で初めて17秒の壁をぶち破った。

 車体に据える計測器にも進歩が示された。爆発的なスタートダッシュはそのままに、長年の課題だったレース中間の平均速度が上がっていた。

 今季世界1位の米国選手とは0・19秒差。ぐっと背中が近づいた。

 大会直前に日程が変わるまで予選は9月2日夜、決勝は3日午前だったため、リカバリー(疲労回復)能力の向上に重きを置いた。「肺機能。取り込める酸素量を増やした」と岩見。気密性の高いマスクを着けたままの猛練習は、一発勝負になった3日の本番でも効果をもたらすはずだ。

 「絶望の淵まで行きましたね」。16歳の転落事故、32歳での床ずれ。孤独な病床で、大矢はマイナス思考から抜け出せなかった。だが今、パラリンピアンとして首都・東京での決戦に挑もうとしている。

 「みなさんの支えがなければ今がない」。浮かぶのは岩見ら恩人の顔。

 追い風は吹いている。

=敬称略=

(有島弘記)

=おわり=

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