頭の中で「優勝、優勝」 田中希実、理想のレースは7年前の全中

2021/08/07 05:30

田中希実

 陸上女子1500メートルで日本新記録を連発し、決勝の舞台を踏んだ田中希実(豊田自動織機TC、西脇工高出身)が、今も理想に挙げるレースがある。7年前の8月。小野南中3年の頃、初優勝した全国中学校体育大会だ。 関連ニュース 五輪で規格外の記録更新 田中希実は走る詩人「中学の時以来、人生2度目の気持ち」 あの幼かった「のぞみちゃん」が、日本女子初の準決勝に 陸上1500m、田中希実 田中希実8位入賞「自分の中の常識を覆すことができた」東京五輪・陸上女子1500M

 田中は後方から追い上げ、中盤からトップ争いを演じた。頭の中で「優勝、優勝」と繰り返していたという。ラスト1周手前で先頭に立つと、僅差のリードを保ったままフィニッシュ。力を出し切り、トラック上であおむけに倒れたまましばらく動けなかった。
 「メダルを取りたいと思っていたけれど、まさか優勝できるとは」。レース後、表情一つ変えずに淡々と自らの言葉を紡ぐ姿が印象的だった。
 中学2年で全国都道府県対抗女子駅伝区間賞に輝き、夏は高地トレーニングに取り組むなど既に高い意識を持っていた。だが、まだ自信はなく、後ろ向きな思考から「優勝することを考えるのが怖かった」と明かした。
 当時は身長152センチ、体重39キロ。今も体格はほぼ変わらないが、引き締まった表情やみなぎる自信は見違えるようだ。全国一になっても控えめだった中学生は、世界で堂々と戦うファイナリストへと成長していた。(井川朋宏)
【五輪特集ページ】東京五輪2020

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