マラソン前田、五輪に名刻む 名門の系譜、兵庫の先輩の助言胸に走り切る
2021/08/07 21:00
女子マラソン レース序盤、快調に走る前田穂南=7日午前、札幌市内(撮影・中西幸大)
7日朝に札幌市で行われた東京五輪の女子マラソンで、兵庫県尼崎市出身の前田穂南が33位となった。2000年シドニー五輪の山口衛里(加東市出身)、04年アテネ五輪の坂本直子(西宮市出身)、08年北京五輪の中村友梨香(同)と、兵庫ゆかりの五輪マラソン代表を輩出してきた実業団チーム、天満屋(岡山市)の系譜に名を連ねる25歳。強い日差しの中、先輩の助言を心に刻み、最後まで走り抜いた。
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前田は尼崎市立園田東中学校から、強豪の大阪薫英女学院高校へ。3年時にはチームが全国高校駅伝で初優勝したが、自身は3年間控えで都大路を走る機会は一度もなく、全国的には無名の存在だった。
中学時代の2009年に世界選手権で銀メダルを獲得した尾崎好美さんをテレビで見て、「いつかは世界で活躍したい」と意識するようになった。高校卒業後、12年ロンドン五輪の重友梨佐まで4大会連続で五輪マラソン代表を送り込んでいた名門、天満屋の扉をたたいた。
指導するのは、現役時代に神戸製鋼陸上部で活躍した武冨豊監督(67)。集団で50分間走る朝練習で基礎体力を養い、選手の個性に応じたメニューやスケジュールを組む名伯楽だ。「競技のこと全てを生活の一部にし、こつこつ努力を積み上げられる」と前田のひたむきな姿勢を評価し、マラソンの適性を開花させた。
20年からコーチを務める山口さんの存在も大きい。五輪代表の重圧を感じ、練習や大会で思うように走れない時期もあったが、山口さんに「一回一回の良い悪いじゃなく、(調整レースは)五輪当日に頑張るためのもの。いろんな情報が入ってくるが、自分の結果を出すことに集中しよう」と声を掛けられた。五輪を知る兵庫の先輩を、前田は精神的な支えとして信頼してきた。
たどりついた晴れ舞台。ゴール後、新型コロナウイルス禍で大会が1年延期となり、難しい調整を迫られたことを明かしたが、33位の結果にも「走り切ることができてよかった」と悔しさをのみ込んだ。(金山成美)