中西麻耶、家族と競技の間で揺れたコロナ禍 恩とエールに応える6位入賞 東京パラ走り幅跳び
2021/08/28 20:44
陸上女子走り幅跳び(T64)決勝 踏み切りに失敗し、苦笑いする中西麻耶=28日午前、国立競技場(撮影・吉田敦史)
28日に国立競技場であった東京パラリンピック女子走り幅跳び(義足T64)で、兵庫県伊丹市在住の中西麻耶(36)=阪急交通社=が5メートル27で6位に入賞した。「故郷を取るのか、スポーツを取るのか」。新型コロナウイルスが広がり始めた昨春、家族を守るために出身地の大分県を離れ、伊丹市に転居。二つのゆかりの地に健闘する姿を届けた。
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コロナ禍前、祖父母と同居する大分の実家と、大阪を行き来していた。健常者の日本選手権で3度優勝した荒川大輔コーチ(39)の指導を受けるためで、2019年秋の世界選手権で初優勝するなど結果も出ていた。
しかし、新型コロナの感染拡大を受け、中西は判断を迫られた。果たして、往来を続けたまま高齢の家族を感染から守れるのか。一方で、4度目のパラリンピックで初メダルを諦めきれない-。当時は、移動自粛が呼び掛けられる直前。選んだのは競技優先だった。
大分を離れるにあたり、知人や支援者にあいさつできなかった。反発も覚悟したが、「遠く離れてもずっと応援するよ」と温かいメッセージが次々と届いた。
伊丹での新生活は大型犬を伴って始まった。悩みは一つ。遠出の練習など自宅を長時間空ける際の預け先だったが、あっさりと解決した。
散歩中、「若いのに大型犬ですか」と声を掛けられた。思い切って相談すると「うちで預かるから」。その輪が近所で広がり、練習のたびに誰かが愛犬を見守ってくれた。
親切心は他にも。遠征後に犬を迎えに行くと、「疲れているでしょう? 晩ご飯に」と、おかずを持たせてくれた。それが何度も。不安を持ってやって来た街だったが、数々の助けに救われた。
迎えた本番。1本目に踏み切りを失敗するなど本来の跳躍を見せられなかったが、終盤の5本目に5メートル27まで伸ばした。
伊丹で受けた恩、何より古里から届くエールを力に挑んだ。「気に掛けてくれた伊丹の皆さんを大前提に、大分との絆をもう一度確かめて世界選手権に行きたい」。来年8月、神戸である「世界パラ陸上競技選手権大会」がリベンジの舞台になる。(有島弘記)
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