記者コラム【ハーフタイム】大場浩平がこの夏、リングを去った。
2021/09/09 05:30
6年ぶりの復帰戦で敗れた大場浩平。再起を誓い、トレーニングを再開した=2020年9月26日、神戸市立中央体育館
大場浩平がこの夏、リングを去った。
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プロボクシング日本バンタム級元王者の36歳。当て勘と防御に優れたアウトボクサーで、世界王座も狙える逸材だった。
2014年にも一度引退。だが心の炎は消えず、妻に「1年限定」と約束して昨秋、6年ぶりに復帰戦を迎えた。結果は完敗。序盤から連打にさらされ2回、レフェリーに試合を止められた。
周囲からは「これ以上試合を重ねると深刻なけがを負いかねない」と引退を促す声もあったが「もう1試合」と懇願。神戸のSUN-RISE(サンライズ)から名古屋大橋ジムへ移り、今年7月、愛知県刈谷市でラストファイトに挑んだ。
人生42戦目はフェザー級6回戦。16歳下の相手にもひるまなかった。堅いガードからの右ストレートなどで優位に立ち、2-1の判定勝ち。引退選手に送られるテンカウントのゴングが、あがいた男の体に染みた。
写真撮影ではいつも小指、薬指、人さし指の3本を立てる。妻と2人の娘への愛情の証しだ。
ブログにつづった。「本当の意味で家に帰れた」。命懸けの思い出づくりがようやく終わった。
(藤村有希子)