全力で駆け抜けた25年 陸上男子3千m障害の篠藤引退

2021/10/28 07:00

引退し、25年間の陸上人生を振り返る山陽特殊製鋼の篠藤淳=姫路市飾磨区細江

 陸上の男子3000メートル障害でアジア大会に出場するなど長年活躍した36歳の篠藤淳(山陽特殊製鋼)が、9月の全日本実業団対抗選手権を最後に現役を引退した。「こんなに長く続けられるとは思わなかった。心残りなく、やりきった」。25年の競技人生を、全力で駆け抜けた。 関連ニュース 陸上男子800m、1年生梅田(須磨学園)が1500mと2冠 「切り替えに自信」終盤一気<県高校総体> 陸上女子七種競技、本多(園田)が圧勝 苦手なトラック種目、冬場に鍛錬「成長できた」<県高校総体> <県高校総体>陸上女子七種、本多が兵庫高校新V 12競技で熱戦


 神戸市垂水区出身。西舞子小時代に陸上と出合い、舞子中で本格的に始めた。飾磨工高時代に兵庫県高校総体男子3000メートル障害を制したことを「一番うれしかった思い出」に挙げる。
 高校でも中央学院大でもメインは駅伝で「陸上を続けていく大きい理由は駅伝、楽しいのは個人種目だった」。東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)9区の区間記録は、今も塗り替えられておらず「最後の箱根で、思いがすごく乗って力が出た」と、主将の責任とたすきをつないだ重みが偉大な実績を生んだ。
 卒業後は地元兵庫の実業団に入り、2014年には3000メートル障害で日本選手権2度目の優勝、アジア大会で4位入賞。「日本のトップという実感もあった」と自信を深めていった。
 目標にした16年リオデジャネイロ五輪には届かず、3000メートル障害に区切りをつけ、「大学時代からやりたかった」マラソンに切り替えた。だが、思うような結果が出ず「同じレースペースを維持できず、向いていない」と冷静に判断。筋肉や酸素吸収、柔軟性など、ハードルを越えて走ることで力が発揮できると分析し、「自分の武器も分かってきた。納得した形で終えたい」と、得意種目で東京五輪を目指すことを決めた。
 昨年5000メートルで自己ベストを更新し、「スピードは維持できているが、3000メートル障害でもベストを出す」と強い思いを持ち続けた。五輪への挑戦は、途中棄権した今年6月の日本選手権で終わった。五輪舞台で19歳の三浦龍司(順大)が同種目で日本人初入賞となる7位に入り、「世界で最後まで日本人選手が勝負するレースがこれからも見られる」と、次世代の活躍に目を細める。
 数々の思い出のうち「高校から実業団まで、駅伝でいっぱい失敗したことが鮮明。前との差がどんどん開いていく焦りが脳裏に焼き付いている」と思い返す。調子が上がらない時期に、3000メートル障害が復調のきっかけとなったことも多く、「両方やってきてよかった」と感じている。
 ラストレースとなった全日本実業団対抗選手権を7位で終え、「すっきりした」とスパイクを脱いだ。「ずっといい環境でやらせてもらい、大きなけがや病気もなかった。人に恵まれた」と感謝。今後は専任コーチとして「経験を伝え、自分を超える選手をいっぱい育てたい」と、新たなステージで陸上に関わり続ける。(金山成美)

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