イニエスタ深まる日本愛「神戸に来て正解だった」 きっかけは「キャプテン翼」

2022/03/09 05:30

神戸での暮らしについて語るヴィッセル神戸のアンドレス・イニエスタ=神戸市中央区波止場町、神戸メリケンパークオリエンタルホテル(撮影・吉田敦史)

 この出会いは必然だったのか。サッカーの元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタ選手(37)が名門バルセロナからヴィッセル神戸に加入し、5季目を迎えた。「月日が長くなればなるほど感じているのは、『神戸に来て正解だった』ということ」。初めて来日後の経験をつづった著書「イニエスタ・ジャパン!」(ぴあ)の出版に合わせ、神戸での暮らしぶりや日本への愛について聞いた。(聞き手・山本哲志) 関連ニュース イニエスタ、神戸に足りないのは「生ハムと家族」 イニエスタのスニーカーブランド 神戸に世界初出店 イニエスタと澤さん、対談で一致した困難の乗り越え方

■経験を共有したい
 バルセロナやスペイン代表で数々の栄冠を手にしてきたスーパースターが、初めての移籍先に選んだのは遠く離れた日本だった。最初は「何のイメージも湧かなかった」という日本からのオファーだったが、幼い頃の思い出がよみがえってきたという。
 「キャプテン翼(スペインでは『オリベルとベンジ』というタイトル)が一番好きなアニメだったんです。そのアニメが作られた国に来られたなんて。(作者の)高橋陽一先生にもお会いできて感謝しかないです」
 主人公オリベル(大空翼)はバルセロナに移籍し、イニエスタ選手は日本でプレーしている。
 「運命という言葉もありますが、本当に面白いですよね。ずっとバルセロナで暮らしてきたので自分にとって大きな転機でした。本を出版したのも、そういった経験を共有したかったからです」
 2021年5月にヴィッセル神戸との契約を2年延長した際、「第2の故郷になった」と語った。著書でも「一時そこにいるだけの旅人ではなく、地元の人たちと同じように暮らしたい」とつづる。
■理想の暮らし求め
 「もちろん文化の違いはありますが、できるだけ溶け込んで交流したいと思っています。安心安全の国ですし、子どもたちの成長にとっても素晴らしい体験です。この街は僕や僕の家族をすごく歓迎してくれました」
 人工島の六甲アイランド、一軒家、そして神戸の中心部へ。理想の暮らしを求め、引っ越しも経験した。
 「六甲アイランドもすごくいいところだったんですが、中心部に住むと便利だし、街の心を身近に感じられます。海沿いを歩いたり、山を登ったり、商店街を散歩したり。子どもと一緒に(六甲山系の麓にある)再度公園でも遊びます。街を楽しむことが大好きです。(マンションの)テラスに人工芝があるので、そこで練習もしていますよ」
■もっと長くいたい
 イニエスタ選手の加入後、ヴィッセル神戸はクラブ初タイトルとなる天皇杯全日本選手権優勝やアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)ベスト4と次々に新たな歴史を刻み、昨季はJ1リーグでクラブ史上最高の3位に入った。
 「ヴィッセル神戸の大きなプロジェクトのため、楽しみに日本に来ましたが、具体的にいつまでいるかは考えていませんでした。今はすごく満足していますし、クラブも私に対して喜んでくれていると思います。だからもっと長くいたいです。初めて来た街ですが、神戸の日々が長くなればなるほど『神戸に来ることが正解だった』と感じています」
 現役引退後は指導者としてのキャリアに関心があるという。著書「イニエスタ・ジャパン!」の名のように、いつかは監督として日本を率いる日が来るのだろうか。
 「将来は誰にも分かりません。これからいい思い出を残すためにも、今はヴィッセル神戸を成長させるために全力を尽くし続けたいです。『日本代表監督になってほしい』と望んでくれるのはうれしいですが、まずは(コーチの)ライセンスを取らなくてはいけませんね。一つ確実に言えることは、私がこの街でとても幸せで、素晴らしい経験をしているということです」

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