「人とバスケに育てられた」 中・高で40年、指導者人生に区切り 元神戸科技高加藤明広さん

2022/04/28 05:30

バスケットボール指導者として神戸科技高などを20度全国大会に導いた加藤明広さん=神戸市内

 バスケットボール男子で神戸市立桜が丘中と御影工(現神戸科技)高を計20度、全国大会に導いた加藤明広さん(63)が今春、約40年の指導者人生に区切りをつけた。兵庫の公立の雄として、日本代表の古川孝敏(秋田)らを育てた名将は「一番大事にしたのは人との出会い。人とバスケットに育ててもらった」と感謝する。(藤村有希子) 関連ニュース バスケB2西宮、競り勝ち2連勝 西地区3位のまま バスケB2西宮 佐賀に快勝、連敗3で止める バスケB2西宮、競り負け2連敗 西地区3位に後退


 神戸市東灘区出身。鈴蘭台(現神戸鈴蘭台)高と中京大でプレーし、卒業後は同市の中学の保健体育科教諭に。1990年には桜が丘中男子を全国中学校大会に導いた。
 94年から今春までは御影工高と、統合後の神戸科技高で教えた。秋田・能代工(現能代科学技術)高や宮城・仙台高の練習を見学したり、部員を連れて遠征したりし、全国トップ校のトレーニング法や哲学を吸収した。
 忘れられないのは、御影工赴任翌年の95年1月に起きた阪神・淡路大震災という。学校の体育館には被災者が身を寄せ、加藤さんは犠牲者のために棺おけを作った。
 選手は春休みまで練習できなかったが、以後は県外関係者が招いてくれた練習試合で力を伸ばし、夏の県高校総体で2位に。優勝した育英と共に全国総体に出場した。「それが自分たちの『復興』だった」と振り返る。
 指導では、リバウンドやルーズボールを奪う泥くさいプレーのほか、「5人の協力が不可欠」と守備の連係を重視。仲間のミスに対し、不満をあらわにする選手には「バスケットは一人では何もできない」と周囲の支えの大きさを説いた。
 育英と競り合いながら兵庫をリードし、2007年全国総体では現Bリーグ2部(B2)西宮の道原紀晃らを擁して8強に躍進。近年は御影工時代の教え子、吉本為理コーチ(現須磨翔風高)と二人三脚で指導した。高校では総体14回、選抜優勝大会(現選手権)5回の計19回、全国舞台に立った。
 卒業後、プロ選手や教員になった教え子が多く、加藤さんがまいた種は各地で花を咲かせている。「バスケット界の底辺が広がり、子どもたちが『兵庫に残りたい』と魅力に感じる受け皿が高校、大学、プロにできたら」と願っている。

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