閉校の中学体育館が練習拠点 女子バスケWリーグ参入「姫路イーグレッツ」、地元支援広がる
2022/09/24 19:50
シーズン開幕前のWリーグオータムカップで奮闘する姫路イーグレッツの(右から)樋口栞帆、白崎みなみ主将ら=2日、群馬県高崎市の高崎アリーナ(撮影・大山伸一郎)
バスケットボール女子の国内最高峰、Wリーグに兵庫県から初めて「姫路イーグレッツ」が参入し、10月にシーズン開幕戦を迎える。日本女子の東京五輪銀メダル獲得で注目を集める同リーグで、関西以西に拠点を置く唯一のチームだ。選手は工場勤務などの傍ら、閉校となった市川町内の中学体育館で練習。播磨に根差して奮闘するチームに、地元の支援の輪も広がっている。(藤村有希子)
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日が暮れ、真っ暗になった市川町の山あい。閉校になった旧鶴居中の体育館から光が漏れる。館内ではイーグレッツの選手が伊与田好彦ヘッドコーチ(66)の指導の下、ドリブルやシュートに汗を流していた。
メンバーは連日、近隣市町の企業などで夕方まで働いた後、練習場に向かう。体力的にしんどいときもあるというが、埼玉県出身の白崎みなみ主将(26)は「周りの支えや環境がとてもよくて、温かい。結果で返したい」と笑みを見せる。
市川町は5月にイーグレッツと連携協定を結び、同校を練習拠点として提供。チームは複数の会場を転々とせずに済み、腰を据えて打ち込めるようになった。
■福崎町で共同生活
チームは2013年に発足し、昨春にAC播磨イーグレッツから改称。Wリーグに次ぐ社会人の地域リーグで活動してきた。
前身チーム創設時から携わる岡田隆人さん(62)=市川町=が代表を務め、観賞魚用飼料メーカーで国内トップシェアのキョーリンフード工業(姫路市)などが主なスポンサー。Wリーグは昨年6月、資金や選手雇用などの面でチームを長期運営できる見通しが立ったとして、加盟を認めた。
選手は15人。白崎主将や、西アフリカ・マリ出身で身長195センチのアディアウイアコエ・ラリヤ・ババ・アーメド(20)らに加え、リーグ参戦決定後に8選手が入団した。従来メンバーを含め兵庫県出身者はいないが、福崎町内で共同生活を送り、地域にとけ込む。
そんな選手たちを後押ししようとスポンサーも増え、今では40以上に。神河町の建築・不動産会社「タテイワ」は選手寮として、自社物件を安価で貸している。
立岩保社長(70)が岡田さんと旧知である縁で、支援を始めた。今ではイーグレッツの練習を連日見学するほどのファンで「選手の頑張りを見ると、若返る。Wリーグ入りがかなってすごくうれしい」と喜ぶ。
選手の雇用先も広がっている。朝来市のプラスチック加工会社「M-TEC」には白崎主将、須永麻美(23)、樋口栞帆(23)の3選手が勤め、検品作業などに携わる。
昼休憩などの短時間でもシュート練習ができるようにと、工場内にはバスケットゴールも設けられた。須永は「練習がオフの日など体を動かしたいときに使っている」と感謝。同僚との交流の場にもなっている。
■兵庫県内 今季は12試合
イーグレッツの開幕戦は10月22日、新潟県阿賀野市の水原総合体育館であり、昨季13位の新潟アルビレックスBBラビッツと対戦。レギュラーシーズン26試合に臨み、うち12試合は兵庫県内で行われる。12月10日には初の県内試合が姫路市のヴィクトリーナ・ウインク体育館で開催。8位までに入れば、4月のプレーオフに進む。
東京五輪「銀」メンバーを複数擁する富士通レッドウェーブなど、強豪が待ち受ける中「チャレンジャーとしてどこまで通用するか」と樋口。須永は「関西唯一のチームで、興味を持ってくれる人もいる。『応援したい』と思われるチームになりたい」と船出を待つ。