ラストファイトに未練は残さなかった。22日の兵庫県高校総体代替大会ボクシングに出場した芦屋学園3年の谷口大芽。高校では初めてだった全国切符をコロナ禍に奪われても、腐らず晩秋まで競技を続けた。代替大会での2ラウンドのみの認定スパーリングを最後に、グローブをつるした。
6人きょうだいの3番目。父も2人の兄もボクシング経験者で、自身は西宮市立鳴尾中2年から本格的に始めた。
口数は少なく、クラスでも目立つ方ではない。それでも、周囲が認めるパンチ力があった。「殴り合うけれど互いに認め合い、仲良くなれる」とやりがいも感じていた。
出場予定だった今春の全国高校選抜大会は中止に。コロナ禍の終わりは見えず、試合のめども立たない。自分の中のたぎる思いがさめていくのを感じたが「仲間と気持ちよく引退したい」と部活動に踏みとどまった。
代替大会ではライトウエルター級の出場者は谷口1人でウエルター級選手とスパーリングに臨んだ。練習に付き合ってくれた父や母が見守る中、持ち前の鋭いジャブで機先を制し、冷静に立ち回って2ラウンドを終えた。
リングを降り、汗にぬれた赤いユニホーム姿で「悔いはないです」と言い切った。拳に懸けた青春は思い出に変え、就職する。「ボクシングをしたら根性は付くんで。根気よく頑張れるかなと」と照れくさそうに話した。(藤村有希子)
