但馬

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 高級飲食店がひしめく大阪・北新地。3月下旬、ある小料理店で、香美町の職員2人が料理長の男性と向かい合っていた。

 「新しい担当です。よろしくお願いします」

 2人のうち年長の緒方親吾さん(44)は、同町が2014年度、県庁に近い神戸市中央区のビルの一室に開設した「町役場神戸営業所」の初代メンバー。春の人事異動で町に戻るため、後任の今井和希さん(27)を連れ、“得意先”へのあいさつ回りだ。

 「香美町は遠い。こうして時々来てくれると、食材の相談もしやすいので助かるよ」。料理長の言葉に、2人の頰が緩んだ。

    ◆◆◆

 町を訪れる観光客数はここ20年間、おおむね130万~140万人台で推移している。ただ主力であるカニ目当ての冬の旅行者は高齢のリピーターが多く、常連が8~9割を占める宿もある。若い世代の新規開拓が急務となっている。

 神戸営業所の役割は、京阪神で町をPRし観光客を誘致すること。役場が直接都市部に出先機関を置くのは極めて珍しい。もちろん但馬では初めての試みだ。

 職員2人が常駐。カニや但馬牛、ノドグロなどの地元食材の特長やイベント案をまとめ、在阪メディアに売り込み、飲食店や旅行会社にも営業活動を行う。神戸・三宮と北新地では昨年、飲食店計30店以上の協力を取り付け、特産の香住ガニ(ベニズワイガニ)を安価で提供した料理フェアも実施。好評を博した。

 中でも興味を示したのはテレビ局だ。町がテレビで取り上げられた回数は、14年度16回、15年度37回、16年度76回と右肩上がり。雑誌やラジオも含むメディアの露出量は、広告費換算で16年度は2億8千万円を超えるという。

 だがその効果は、現時点で観光客数増には結びついていない。それどころか大手旅行会社が15年に実施したアンケートでは、関西や四国の45%が香美町を「知らない」と回答。町の観光関係者らに衝撃が走った。「観光客を増やすには、まず町の名を知ってもらわないと。今は種をまいている段階」と緒方さんは話す。

    ◆◆◆

 国勢調査によると、人口減や高齢化に伴い、町の1次産業、2次産業の従事者はここ20年で7500人から3800人とほぼ半減した。半面、観光業を含む3次産業はあまり変わらず、民宿などのサービス業に限れば2500人から3千人に増えた。雇用面でも、観光の重要性は高まっていると言える。

 町は本年度、「観光地の玄関口にふさわしいにぎわいを取り戻す」とし、駅舎の傷みや空き店舗が目立つJR香住駅周辺の再整備に着手する。さらにJR余部駅の展望施設「空の駅」には今秋、全面ガラス張りのエレベーターが完成予定。新たな集客施設として期待がかかる。

 「町が観光振興に本腰を入れている今は好機。我々もこの追い風に乗りたい」と香住観光協会の藤原進之助会長(71)。それぞれの取り組みが観光客増という実を結ぶのか。「収穫」の時期が迫る。

     ◇

 25日告示、30日投開票の香美町長、町議選を前に、町の課題を探った。(黒川裕生)

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