但馬

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 医療上の必要性は低くても、地域に受け皿がないため、長期入院を余儀なくされがちな精神疾患患者。兵庫県の但馬地域で、そんな患者の退院や地域での暮らしを支える取り組みが進む。10年、20年と長く病院で暮らす患者も多いが、但馬では2014年からの3年間で、28人が病院外での生活を始められた。要となっているのが、自らの闘病体験を基に患者を支える「ピアサポーター」の存在だという。(阿部江利)

 豊岡健康福祉事務所などによると、但馬地域では現在、15人程度のピアサポーターが活動し、患者らの社会復帰を支えている。

 精神疾患患者が、生活の場を病院から地域に移す「地域移行」の取り組みは、全国的に遅れている。退院後、必要な医療や福祉サービスを受ける仕組みはあるものの、患者らが退院後の生活に不安を感じることが、大きな理由となっているという。

 そうした現状を踏まえ、豊岡健康福祉事務所などは14年度から、生活支援センターほおずき(豊岡市戸牧)など2施設と協力し、希望者を募り、講座を開いてピアサポーターの養成を始めた。

 但馬地域には1年以上入院する患者が300人以上(17年1月時点)いるが、14年度には1人、15年度には13人、16年度には14人が退院できた。うち19人にピアサポーターが何らかの形で関わっている。

 患者の相談に乗って不安を取り除くほか、家探しや日用品の買い出し、通院の付き添いなども行う。支援した時間に応じ、賃金を受け取れる。

 同事務所の柳尚夫所長は「長期入院で患者自身が退院への希望を失ってしまうケースも多いが、同じ経験をしたピアサポーターが身近にいれば、患者も前向きになれる。逆にピアの人も、つらい経験があるから人を支えられる、と生きがいを感じているようだ」と話している。

 2014年に「ほおずき」所属のピアサポーターとなった上垣多美子さん(60)は、30代の時に統合失調症を発症。幻聴が聞こえ始めて病状は急激に悪化した。家事もできない状況になったというが、今は治療や投薬で改善したという。

 これまでに患者8人と関わった。地域で生活を始めた男性の通院に付き添った際には、何気ない医師の言葉に傷ついた男性が、自信を無くして泣き出してしまったという。後で上垣さんが「あんな言い方はなかったよね」と慰めると、男性の気持ちが落ち着いたという。

 「どこまで相手を思えるか、試行錯誤の日々。でも、関わる人が元気になる姿を見られたりもする。支援を始めて以来、毎日が楽しい」。

 女手一つで幼子3人を育てる不安から、うつ病を発症した同市の今井綾子さん(55)は、15年からピアサポーターに。今では、服薬への不安や副作用のつらさを訴える患者にも共感し、声掛けができる。「どん底の状態を経験し、いろんな人に助けられて今の自分がある。いつか自分も支える側になりたいと勉強を続けている」と話す。

 ■ピアサポーター 精神的な病気や障害を、自らも経験した仲間(ピア)として、対等な関係で患者の退院や地域での生活を支える支援者のこと。退院したいと考える患者の相談に乗ったり、情報を伝えたりするほか、通院や退院に必要な準備なども手伝う。養成講座を受講し、面接を受けて保健所や相談支援事業所などで働くケースが多い。

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