但馬

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 今年も残りあと1カ月。振り返ると、今年ほど「但馬」という言葉が、全国のお茶の間で聞かれた年はなかったのではないか。「おい、但馬」。NHKの大河ドラマ「おんな城主 直虎」で、主人公の井伊直虎が、幼なじみという設定の家臣・小野但馬守政次を呼ぶせりふだ。戦国時代の遠江国(現在の静岡県)が舞台のドラマに、なぜ兵庫県の但馬が出てくるのか。疑問を残したままでは年も越せない。年末の総集編を前に調べてみた。(阿部江利)

 ドラマの「但馬」とは、井伊家筆頭家老だった小野政次のこと。テレビでは夏の終わりに非業の死を遂げたが、人気俳優の好演もあってファンの心をわしづかみに。政次をテーマにしたCDが人気を博し、インターネットでは「政次ロス」の言葉も飛び交った。

 では「但馬守」と名乗るからには、但馬地域と何かつながりがあるのだろうか。豊岡市立歴史博物館(豊岡市日高町)で古文書を担当する資料調査員、石原由美子さん(56)は「私もドラマで初めて『小野但馬守』を知ったのですが-」と前置きした上で、話してくれた。

 「~守」とは、朝廷が任命する律令制の官職名だ。但馬守ならば「但馬国の長官」のような立場で、例えば遠藤周作の小説「男の一生」の主人公、豊臣秀吉の家臣で出石城主でもあった前野長康も但馬守だ。彼は律令制における身分では、貴族とされる「従五位下」の位も持っていた。他にも徳川将軍家の兵法指南役、柳生宗矩も但馬守として有名だ。

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 ドラマは遠江国・井伊谷が舞台だが、「但馬守は、地方の郡部を治める家の、しかもその家臣が名乗れるような官職名ではありません」と石原さん。「そもそも『但馬』と呼び捨てにしている直虎自身が、官位を持っていない。政次もそれを手に入れる金や勢力を持っていたかは疑問で、おそらくは自ら名乗っていたのでしょう」と推測する。

 幕府や朝廷の力が弱った戦国時代には、武士が自ら官位を名乗ることがあり、当時あちこちに「但馬」がいた可能性があるという。「私は普通の武士ではない、ただ者じゃないぞ、と示したかったのでは。とはいえ武士階級も甘くないので、主君や回りに家柄や実力を認められていないと名乗れないとも思います」。

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 では、たくさんあった当時の国からなぜ但馬を選んだのだろう。石原さんによると、名乗りは先祖にちなむケースが多かったといい「但馬の小野、で頭に浮かんだのは、鎌倉時代の但馬国守護『小野時広』ですね」と1人の名前を挙げた。当時名をはせた武士団「武蔵七党」の一つ小野党の流れをくむ武士で、鎌倉幕府から守護として任命され、但馬に来たという記録が豊岡市日高町の進美寺の文書(県指定文化財)に残るという。

 小野党は鎌倉時代に滅びてしまったが、しぶとく生き残った子孫が遠州まで流れていれば、小野但馬を名乗った可能性があるかもしれない。「政次とのつながりを示す史実はないので、あくまで想像の域を出ませんが、本当に但馬と関わっていれば面白いですね」

 【守と守護】「~守」は朝廷が任命する律令制の官職名で、奈良・平安時代、地方を治めるため朝廷が各国に派遣した行政官。当時は全国に多くの国があり、その長官役の一つが「守」だった。一方「守護」は、鎌倉・室町時代、朝廷ではなく幕府の任命を受け、国の治安維持に当たった人の職名。戦国時代になると、朝廷も幕府も力が弱まり、誰にも任命されずに「守」を自称する武士が相次いだ。その後、江戸時代には幕府の許可を得れば「守」が名乗れたという。

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