但馬

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屋台を引いて街頭に繰り出し、コーヒーを配る守本陽一さん(左)=豊岡市役所前
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屋台を引いて街頭に繰り出し、コーヒーを配る守本陽一さん(左)=豊岡市役所前
医療やまちの未来を語り合う「ヒトカド」の参加者たち=豊岡市寿町
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医療やまちの未来を語り合う「ヒトカド」の参加者たち=豊岡市寿町

 豊岡病院(兵庫県豊岡市戸牧)の研修医、守本陽一さん(25)が、地域医療の充実を目指す一つの手段として、手作りの屋台を引いて市内に繰り出し、住民と触れあう新しい取り組み「モバイル屋台de健康カフェ」を続けている。屋台では医療関係者とは名乗らず、たまたま通り掛かった住民にコーヒーを振る舞う。住民同士として何気ない会話を重ねることから始め、医療について気軽に話せるネットワークを広げている。

 「コーヒー飲みませんか?」。街角に置かれた木製の屋台から突然、男性がコーヒーを差し出す。屋台は幅約1メートル、高さ約2メートル。小さいながらカウンターを備え、屋根と車輪が付いている。コーヒーを手渡された側は一瞬ためらうが、「今日はどちらへ?」などと聞かれるうちに、自然と会話が弾み始める。

 守本さんは養父市出身で、今春から同病院に配属された。「モバイル屋台-」は元々、東京大学の教員が始めた試みで、そうした取り組みを知って魅力を感じた守本さんは、関東の大学医学部在学中の2016年12月、ふるさと但馬で、医師や看護師、医療を学ぶ学生らと初めて実施した。

 屋台は、地域とのつながりに価値を見いだす「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」という概念と健康の関係に着目し、考案された。「つながりが豊かな地域ほど、健康で寿命も長い」という研究も、1990年頃から世界的に知られていたという。医師らが屋台で地域を歩き、住民や、地域のつながりの核になるような人に出会って関係性を築きながら、予防医療や健康作りなどを身近に感じてもらうのが狙いだ。

 企画を始めるに当たり、屋台の準備費用は2016年にクラウドファンディングで調達。屋台自体も、声を掛けて集まった住民らと、会話をしながら街頭で組み立てた。初回は16年12月に実施。5日間で約200杯を配った。18年4月からは、不定期だが土日を中心に月1回、同市寿町のシェアスペース「コトブキ荘」を発着点に、市街地に屋台を繰り出している。

 守本さんは「病気を発症してからではなく、どう健康に暮らすかが大事。病院や勉強会に来ていない人に医療を伝えたい」と夢を語る。地域コミュニティーや趣味を医療に生かす「社会的処方」と呼ばれる考え方にも関心があるという。

 カフェでは、医者だと最後まで明かさないことも多々ある。守本さんは「こんなことをしているお医者さんがいるんですね、医療の見方が変わった、と言われるとうれしい」と笑う。「成果はすぐには出ないが、自分が草の根レベルで活動を楽しんで続けることで、心身が健康な『ウェル・ビーイング』につながれば」

■医療や地域の暮らし語り合う 座談会も開催

 豊岡病院の研修医守本陽一さん(25)は5月から、健康に生きられるつながりづくりを目指す座談会「ヒトカド」も始めた。ひとかどの人物を囲んで語り合い、思いを共有して互いの人生を豊かにしようという試みだ。

 「ひとかどの人物」という言葉は、単に優れた人という意味ではないという。90歳を超えても元気な高齢者、地域にUターンした若者など、メディア受けはしないそんな人たちから学ぶ場としている。

 会場は、豊岡市寿町のシェアスペース「コトブキ荘」。5月2日の第1回は、会員制交流サイト(SNS)での呼び掛けに応じた住民らと、医療と演劇について語り合った。6月1日の第2回は、医療や福祉の関係者ら約10人が参加。京都府綾部市の地域おこし協力隊員で看護師の佐藤春華さん(26)が、自らが務める「コミュニティーナース」という取り組みを紹介した。

 佐藤さんは、コミュニティーナースの活動を「病院ではなく田んぼ(地域)に居て、住民が健康な時から暮らしに関わる」と説明。「モットーは、住民が最期まで安心で幸せな地域づくり」「寄り添われ、幸せを感じながら集落をたたむ『まちの終活』にも取り組んでみたい」などと語り、参加者と意見を交わした。

 守本さんは「依存先を増やすことが、自立につながるという考え方もある。ひとかどの人を核に人が集まる場をつくり、ゆるやかなつながりを増やしていければ」とし、今後も月1回の頻度で続けたいという。(阿部江利)

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