但馬

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造り物がルーツ? 道頓堀のシンボルでもある動くカニの看板=大阪市中央区道頓堀1
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造り物がルーツ? 道頓堀のシンボルでもある動くカニの看板=大阪市中央区道頓堀1
くしやかんざしなど化粧具一式の鶏。ひよこは刷毛である=大阪くらしの今昔館
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くしやかんざしなど化粧具一式の鶏。ひよこは刷毛である=大阪くらしの今昔館
これぞ一式飾り! 全身木魚の布袋さん=大阪くらしの今昔館
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これぞ一式飾り! 全身木魚の布袋さん=大阪くらしの今昔館
たんすや手鏡など嫁入り道具一式の獅子=大阪くらしの今昔館
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たんすや手鏡など嫁入り道具一式の獅子=大阪くらしの今昔館
荒物一式のカマキリ=大阪くらしの今昔館
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荒物一式のカマキリ=大阪くらしの今昔館

 あるジャンルの道具や生活用品だけで、建造物や動物などを表現する「一式」の造り物について、8月下旬に紹介してきた。そのルーツとみられる江戸期の大坂では、造り物の種本が出版され、人気を博したという。その「レシピ」から再現された造り物が、大阪の博物館にあるらしい。何と!! これは自分の目で確かめるしかない!(長谷部崇)

 前回の記事で、1837年の「四季造物趣向種」という種本に触れた。しかしよく調べると、「造物趣向種」はこれだけではなかったようだ。大阪芸術大学の西岡陽子教授によると、初版は1787(天明7)年に出され、1837(天保8)年、1860(安政7)年と、内容を変えながら3回出版されたという。

 その造物趣向種を復元した造り物が、大阪市北区の「大阪くらしの今昔館」にあるという。見に行くのは仕事だろうか。いや、もちろん仕事だ。やじ馬根性丸出しで、大阪に向かった。

 同館は、天神橋筋商店街に面したビルの8~10階にある。「江戸時代の大坂」をテーマにした9階は、広大な空間に、1830年代の大坂の町並みを実物大で再現。呉服屋、唐物屋などの町家が軒を連ねている。

 まず案内されたのは、建具屋の店の間に飾られた「仏具一式」の布袋さん。見たとたん、思わず吹き出した。大小の木魚が顔や手脚、太鼓腹と化し、まさにでっぷりとした布袋さん。化粧具一式の鶏は、くしやかんざし、紅入れの貝殻、髢(付け毛)などで飾り、ひよこは刷毛をちょこんと置いただけ。嫁入り道具一式の獅子は、たんすが獅子頭。荒物一式のカマキリは、竹ぼうきの前脚で威嚇する。「これが“本場”の一式飾りか!」

    ◆◆◆

 天明版、天保版、安政版の造物趣向種は、提灯一式の象▽扇一式の鶴▽炊事具一式の恵比寿▽しゃもじ一式の如来尊像▽刃物一式の鷲-など、延べ約100点の造り物を紹介している。西岡教授によると、初版の天明版は読み物として、作者の狂歌師らがしゃれ心を競う点に重点が置かれたが、天保版になると具体的な制作方法を指南するなど「実用書」の性格が強まり、安政版とともに全国に広める役割を担ったという。

 「同じ材料だけで、全く別のものに見せようとする一式飾りの発想は、とても大阪的」と大阪くらしの今昔館の谷直樹館長。近世後期の大坂は、まさに造り物の中心地だった。各地の正遷宮や地蔵盆で、競うように造り物が現れたが、明治以降は外国文化の影響もあったのか急速に廃れ、今の大阪では造り物を知る人もほとんどいない。

 「造り物は、はやり廃りの激しい上方で生まれた文化が、伝わった先の地方で生き残った好例。昔の地方の人々は大坂や京への憧れもあって、上方から来た文化を大切にしたのでは」と谷館長は推測する。「造り物が面白いのは、毎年新しいのを作ってつぶすところ。その時々の政治風刺や流行や世相を反映させると、作品が生き生きしてくるでしょう」。実は全国的にも貴重な文化だと、但馬の人にも知ってほしいという。

    ◆◆◆

 大坂では文化・文政期(1804~30年)ごろから、大規模な造り物を町家の大屋根などに飾ることが流行した。「自分たちの造り物をより目立たせ、見物客を驚かせるためでしょう」と西岡教授。大阪歴史博物館によると、例えば1858(安政5)年、今の大阪市北区にあった神社の正遷宮で、屋根上に飾られた伊勢エビは何と15間(約27メートル)もあったとか。

 西岡教授は「大規模なものを作ることができたのは経済力のあるまちだけで、それも20年に1度の遷宮の機会などに限られた。膨大な費用がかかるため、年中行事の造り物は大きくできなかったんです」と解説する。「道頓堀の大きなカニの看板なんかも、発想の根元はここにあると思います」。へえ~。小さい頃、あのカニの看板やグリコサインを見上げて仰天したのを思い出した。

 さて、さらに調べると、大坂同様に圧倒的スケールの造り物が出現した都市が但馬の身近にあった。姫路である。何やら「但馬のギモン」から脱線してきたが、もう少しお付き合いを。

【メモ】「大阪くらしの今昔館」9階では、4月中旬から9月初めまで「夏祭り」をテーマに展示をしていた。着物の帯で作った宝船や、塗り物一式の「鞍馬の僧正坊」など、「造物趣向種」を基にした造り物計6点が並んだ。今年の展示はすでに終わってしまったが、来年以降も見られるという。地下鉄「天神橋筋六丁目駅」下車すぐ。火曜日休館。TEL06・6242・1170

 また、パソコンなどで見られる造物趣向種のデジタルアーカイブは、大阪市立図書館や早稲田大学図書館のホームページなどで公開されている。

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