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分譲開始から11年を経てなお半数以上の区画が売れ残る「香住山手」=香美町香住区若松
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分譲開始から11年を経てなお半数以上の区画が売れ残る「香住山手」=香美町香住区若松

 兵庫県香美町香住区の分譲宅地「香住山手」の事業主体「香美町山手土地区画整理組合」(地権者102人)が5月、約5億3千万円残る債務の軽減を同町とJAたじまに求めて申し立てた特定調停が豊岡簡裁で始まった。バブル崩壊後の景気低迷や人口減少の影響で、2007年の分譲開始後も売却は進まず、今年3月末時点で全117区画中51区画と半数に届かない。“負の遺産”とも呼ばれる事業をどう収束に導くことになるだろうか。(金海隆至)

■旧町時代に発端

 JR香住駅北東約1・5キロ、同区香住、若松、一日市にまたがる約2万3千平方メートル(開発総面積約11万7千平方メートル)。もともとは田畑や山林が広がる丘陵地で、一帯を通る国道178号「香住バイパス」(約2・6キロ=現県道香美久美浜線)が1987年に都市計画道路の認可を受けたことでアクセス改善の期待が高まり、旧香住町による事業構想が本格化した。町が軟弱地盤の調査や排水対策を実施した上で、地権者104人が土地を提供して98年に同組合を設立し、開発が始まった。

 当時を知る香美町職員は「漁業や水産加工業が盛んだった昭和後期、中心部の地価は豊岡市より高かった。バイパスの計画が浮上する中、良質な宅地を求める声が再燃した」と振り返る。

 宅地の造成は2001年以降本格化し、町は造成費や公園の用地取得費など約3億4千万円を組合に助成。ほかに、公立香住病院方面と宅地を結ぶ町道や公園、下水道といった周辺の公共施設整備に約10億5千万円を投入した。

■債務完済に黄信号

 組合の総事業費は現計画で約14億8千万円。宅地(1区画平均200平方メートル)の売却金などで約10億円を賄う計算だった。

 しかし、07年に1坪当たり約22万円で分譲開始後、地価下落などで売れ行きは振るわず、単価を10年に約18万7千円、14年に約15万円と見直した。昨年は約9万円まで下げるキャンペーンに踏み切り、残る区画を完売しても債務を完済する資金を確保できない状況に。販売見通しは依然不透明で、組合内では「企業など大口の顧客が現れない限り厳しい」という声も漏れる。

 債務は同町からの無利子約2700万円に加え、同JAからの約5億700万円もあり、JAへの利息は年間約450万円という。

■三者相応の負担は

 組合は昨年から対応を検討。今年5月、香美町とJAたじまを相手に本年度内の合意を目標に特定調停を申し立て、6月27日に初の協議に臨んだ。組合は調停案について「成立した場合、債務返済に必要な新たな賦課金を組合員に求めることも視野に入れる」とする。

 一方、JAたじまは「(JAの)組合員から預かった資金を減らせない。全額返済を求める」と譲らない。

 香美町は「議会の判断を仰ぐ必要も予想され、現時点では見解を言えない」とするが、ある幹部は「時代の変化を読み切れず、事業を進めてきた道義的責任が町にある。町民には将来、なんらかの負担をお願いすることがあるかもしれない」と話している。

【特定調停】借金返済が困難になった債務者が債権者と返済方法などについて話し合い、生活や事業の立て直しを図る手続き。裁判官と調停委員らで構成する調停委員会が、申立人の生活や事業の状況、債権者の考えを聴いた上で、債務をどのように支払うことが公正かつ妥当で経済的に合理的なのか、双方の意見を調整する。合意が成立すると調停調書を作成し、債務者が支払いを滞るなど約束事項を守らなかった場合、債権者は調書を債務名義として強制執行できる。

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