但馬

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「かにのほほえみ」で作ったおにぎりを頬張る子どもたちと小谷好男さん(後列右)、直美さん(同左)=香美町香住区中野
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「かにのほほえみ」で作ったおにぎりを頬張る子どもたちと小谷好男さん(後列右)、直美さん(同左)=香美町香住区中野
カニ殻肥料をアピールする香住水産加工業協同組合の長一仁組合長(左)と濱戸康幸総務課長=香美町香住区守柄
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カニ殻肥料をアピールする香住水産加工業協同組合の長一仁組合長(左)と濱戸康幸総務課長=香美町香住区守柄
高い鮮度を誇るベニズワイガニの競り=2019年9月4日、香住漁港西港
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高い鮮度を誇るベニズワイガニの競り=2019年9月4日、香住漁港西港
ブランド米「かにのほほえみ」(JAたじま香住総合営農生活センター提供)
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ブランド米「かにのほほえみ」(JAたじま香住総合営農生活センター提供)

 カニ殻の話をしよう。日本海で育ったカニはうまいが、甲羅や殻は捨ててしまうのが普通だ。使うとしても甲羅酒を飲む時ぐらいのものだろう。しかし「カニの本場」兵庫県香美町では伝統的に、甲羅や脚の殻も余すところなく活用している。その用途は、ブランド米や特産・二十世紀梨の栽培に欠かせない有機肥料や、健康食品の素材など幅広い。「隠れた名産」のパワーに迫ってみた。(金海隆至)

■甲羅、脚の殻から肥料 品質高く、県内外で好評■

 赤みを帯びたカニ殻の破片がキラキラと輝く。同町で香住水産加工業協同組合(46業者)が製造するカニ殻肥料の一粒の大きさは6ミリ。無添加で防腐剤などを使用しない品質が、米や果物を栽培する県内外の農家に好評という。

 同町でベニズワイガニ漁が始まった1960年代から製造している。原料の一部にはズワイガニも含むが、9割以上は香住漁港西港(同町香住区若松)で水揚げされるベニズワイガニの甲羅と脚である。

 肥料としての「パワー」の源は、主成分で約30%を構成するキチンだ。土壌改良に使えば、微生物や細菌類を活性化して農作物がよく育つとされる。同町の特産、二十世紀梨の糖度を増すための肥料としても重宝されてきた。

 水産加工業者がボイルして身やみそを抜き、冷蔵食品や缶詰製品に加工した後、大量に廃棄する殻を収集。町内の処理場で乾燥させて粉砕機にかける。「甲羅」「脚の殻」に加え、両方の粉末を入れた3種類を販売。価格は15キロ1430~2640円と他の有機肥料などに比べて割高だが、新規購入者も増えている。

 肥料作りの悩みは、生産量がベニズワイガニの水揚げ量に左右されること。近年はピーク時の約6350トンの3割を下回るため、注文を断らざるを得ないケースもあるという。長一仁組合長(71)は「たくさん売りたいのだが…」と苦渋の表情を見せる。

 販売担当の濱戸康幸総務課長(53)は「カニの味覚が日本一なら、肥料にしても日本一」とアピールするものの、その生産量は「カニ頼み」。カニのみぞ知るのである。

■ブランド米「かにのほほえみ」 甘さ粘り、うま味結実■

 そのユニークなネーミングを発案したのは、議論の場にたまたま居合わせた国民宿舎の女性従業員だそうだ。香住水産加工業協同組合が製造するカニ殻肥料を使って地元で栽培されるブランド米が「かにのほほえみ」だ。

 地域独自のブランド米作りは2007年、JAたじま香住総合営農生活センターの香住オペレーター部会の有志たちが始めた。同町内の国民宿舎でネーミングを議論していた際、宿舎の女性従業員にも候補を挙げてもらったところ、秀逸な提案に満場一致で決めたという。

 品種はコシヒカリ。カニ殻のキチンが土の微生物のバランスを整えて育った米は甘く、粘りがあるのが特長だ。昨年は生産農家が増産や販路拡大を目指して生産部会(現在7人)を発足させ、商標登録も取得した。

 減農薬で栽培する同町の小谷好男さん(81)は毎年秋の稲刈り後、約200アールの田んぼに稲わらとカニ殻肥料をすきこむ。「カニ殻の適切な量など、十数年前から試行錯誤を繰り返し、豊かな土壌を作ってきた」と胸を張る。

 認定農業者の長女直美さん(54)は「購入したお母さんたちにも『子どもの食べる量が違う』と喜ばれている」と話している。

■極細繊維化、注目の新素材 健康増進や植物育成期待■

 カニ殻に含まれる「キチン」は、健康食品やサプリメントに有効な原料として重用されている。化学処理すると、ダイエットや抗菌効果のある「キトサン」となり、キトサンは膝の関節症の痛みを和らげる「グルコサミン」の素になる。

 鳥取市のベンチャー企業「マリンナノファイバー」はカニ殻を水中で粉砕し、キチン由来の新素材「キチンナノファイバー」を製造することに成功した。幅が10ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)という極細繊維。肌に塗ればけがの治癒を早めたり潤いをもたらしたりするほか、服用すれば脂肪やコレステロールを減らし、腸内環境を改善するといった効果が注目されている。

 植物に対しては、免疫機能を高めて育成を促す効果もあるという。同社代表取締役で鳥取大大学院工学研究科の伊福伸介教授(45)は「実用化を進め、さらに普及させたい」と意気込んでいる。

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