但馬

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スナック「古城」で吉永小百合さんと談笑する谷口佐智子さん(谷口さん提供)
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スナック「古城」で吉永小百合さんと談笑する谷口佐智子さん(谷口さん提供)
カウンターでリラックスする吉永小百合さんを捉え、NHKから写真賞を受けた1枚(谷口さん提供)
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カウンターでリラックスする吉永小百合さんを捉え、NHKから写真賞を受けた1枚(谷口さん提供)
吉永小百合さんの隣には松田優作さんの姿も(谷口さん提供)
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吉永小百合さんの隣には松田優作さんの姿も(谷口さん提供)
「夢千代日記」の舞台となった湯村温泉=新温泉町湯
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「夢千代日記」の舞台となった湯村温泉=新温泉町湯
「スナック『古城』は宴会場フロアの廊下に店を構えていた」と説明する朝野泰昌社長=朝野家
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「スナック『古城』は宴会場フロアの廊下に店を構えていた」と説明する朝野泰昌社長=朝野家

 大笑いする大女優と一緒に、楽しそうにカメラを見つめる女性の写真がある。湯村温泉街(兵庫県新温泉町湯)を舞台に撮影されたNHKドラマ「夢千代日記」で主演した吉永小百合さん(75)と、湯村観光ホテル(現朝野家)内にあったスナック「古城」のママ、谷口佐智子さん(74)=新温泉町=だ。谷口さんが1989年に温泉街で開業したスナック「さちこ」は今年3月、31年の歴史に幕を下ろした。思い出が詰まったアルバムをひもといてもらった。(末吉佳希)

 「小百合さんは気取らずおっちょこちょいで、とにかく明るい人だった」。カウンター越しに見た大女優の素顔を語る。

 主人公の本名は谷口さんと同じ「さちこ(左千子)」だったことから、夢千代を演じた吉永さんには「妙に親近感が湧いちゃって、すぐに打ち解けられた」と振り返る。

 「古城」には連夜、俳優らが集まった。アルバムには当時の写真が何十枚も残る。

 「新 夢千代日記」のロケで訪れた際、谷口さんが撮った吉永さんの写真は、カウンターにひじを突いてリラックスした表情。「めったに見られない女優の素顔」としてNHKから写真賞を受けたという。

 グラスを前にカウンターに並んで座る吉永さんの隣に、ほろ酔い加減でたばこを持つ松田優作さん(当時34歳)の姿が見える1枚がある。「新 夢千代日記」では郷土の歌人前田純孝とプロボクサーの二役を演じた。がんで亡くなる6年前だった。

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 谷口さんは20代前半まで美容師として同温泉街で働き、腕を磨くために大阪へ。30歳で帰郷した後、知人の紹介で湯村観光ホテルに入社し、社長だった故朝野繁さんにホテル内のスナック「古城」を任された。「全くお酒を飲めなかったから不安だったけど、拾ってくれた恩に報いたいと思い、喜んで引き受けた」と話す。

 数年後に「夢千代日記」のロケが始まると、ホテルは撮影チームの拠点となり、「古城」には吉永さんらが頻繁に訪れた。

 忘れられない思い出がある。

 温泉街の中心を流れる春来川近くで住民が「荒湯」の温泉を使って洗濯をしていた様子を見た吉永さんと共演者の故樹木希林さんから「荒湯で洗濯をしてみたい」と頼まれた。店を閉めた午前0時ごろ、3人で川へ向かった。吉永さんが岩で力強くこすりつけたシルクの下着はぼろぼろになった。「こんなになっちゃった、っておどける吉永さんを前に、希林さんと顔を見合わせて大笑いしたわ」

 撮影期間中は1日のうち19時間ほど活動した。スナックを深夜に閉め、仮眠して数時間後にはホテルの調理場へ向かい、早朝から動きだす撮影チームにモーニング用のサンドイッチとコーヒーを届けた。1週間で体重が7キロ減ったことも。「過酷だったけど、カメラの前であでやかに演技をする吉永さんを見ると、不思議と体が軽くなった」という。

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 88年、ホテルは改築され、谷口さんは89年に「スナックさちこ」を開業。住民や観光客がこぼす悩みや吉報に耳を傾けた。

 「吉永さんら名優たちや、通ってくれた地域の皆さん。たくさんの出会いがあった。私の人生の宝物」。吉永さんとは今も年賀状のやりとりを続けている。

【夢千代日記】広島の原爆で胎内被爆した女性が、ひなびた温泉街で芸者「夢千代」として懸命に生きる日々を描く物語。脚本家の故早坂暁さんが手掛けた。湯村観光ホテルの社長だった故朝野繁さんがロケ地として誘致。NHKドラマの3部作シリーズとして1981年に始まり、「続 夢千代日記」(82年)「新 夢千代日記」(84年)と続いた。85年には映画化され、相生市出身の故浦山桐郎監督がメガホンを取った。湯村温泉は「夢千代の里」と呼ばれ、吉永さんをモデルにした夢千代の銅像が観光スポットになっている。

■スナック激減…住民ら年内カフェ開店へ

 湯村温泉のスナックが激減している。湯村温泉観光協会によると、昭和後期には温泉街に10軒近くあったが、店主の高齢化などで10年ほど前から閉店が相次ぎ、店舗型は「スナックさちこ」が最後。残るのは一部の旅館内にある数軒のみという。日没後の温泉街はほとんどの明かりが消えてしまうのが現状だ。

 そんな中、住民や観光客の憩いの場をつくろうと、地元住民や地域おこし協力隊員でつくる「おんせん天国カフェ運営協議会」が、年内を目標にカフェの準備を進めている。会議では「夜のまちに明かりを」という意見も出る。

 カフェは温泉街の中心部にある「荒湯センター」2階を改装する。同協議会会長の角田和寿さん(58)は「夜に遊べる場が減っているので、夜間営業も視野にある。バーなのかスナックなのか形式は未定だが、何らかの形で夜を盛り上げたい」と策を練る。(末吉佳希)

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