但馬

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余部鉄橋の変遷を半世紀にわたって撮影し、集大成の写真集を出版した千崎密夫さん=香美町香住区余部
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余部鉄橋の変遷を半世紀にわたって撮影し、集大成の写真集を出版した千崎密夫さん=香美町香住区余部
「逆さ鉄橋」=2007年(千崎密夫さん撮影)
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「逆さ鉄橋」=2007年(千崎密夫さん撮影)
ホームの鋼材ベンチに腰掛ける観光客の夫妻=JR餘部駅
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ホームの鋼材ベンチに腰掛ける観光客の夫妻=JR餘部駅
風雪に耐えた鉄橋の鋼材を加工して販売されるグッズの数々=道の駅あまるべ
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風雪に耐えた鉄橋の鋼材を加工して販売されるグッズの数々=道の駅あまるべ
神戸新聞NEXT
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 「東洋一の鉄橋」と呼ばれたJR山陰線の余部鉄橋(兵庫県香美町香住区余部)が観光スポットとして再生するまでの変遷を撮影し続けた地元のアマチュア写真家千崎(せんざき)密夫さん(88)が写真集「さようなら余部鉄橋-苦闘50年の集大成」を自費出版した。1912(明治45)年の完成から98年間、鉄道の運行を支えた鉄橋は2010年、コンクリート製の橋に架け替えられ、今年8月で10年。橋脚の一部を残して姿を変え、但馬有数の観光名所として“第二の人生”を歩んでいる。(金海隆至)

 青々と広がる海のすぐそばの谷に、赤く武骨な橋脚を下ろした余部鉄橋。周辺の山々や水田、焼き杉板の外壁が続く集落の家並みに溶け込んだ風景は一枚の絵のように美しく、見る人の心を和ませた。

 香住町(現香美町)南部の山間部に住んでいた千崎さんは1957年、勤務先の業務で初めて余部を訪れた。駅も道路もなかったため、東の鎧駅から約2キロ、線路沿いを歩いた。最後のトンネルを抜けると、目の前に高さ41メートルの鉄橋が現れた。「住民の後を追って鉄橋の上を歩いたが、足が震えた」と振り返る。

 翌58年、結婚を機に入居した妻の実家は、鉄橋の北約100メートルだった。

 82年、開通70周年記念行事を前に、最後に走った蒸気機関車の写真を撮っていた千崎さんを訪ねてきた国鉄職員から「開通100年の頃には架け替えが予想される」と聞かされた。「架け替えられるまでの姿を残したい」と思い立ち、鉄橋を本格的に撮り始めた。

 イメージ通りの写真を撮りたい一心で、さまざまな構図を探し歩いた。登った木から転落したり、岩場で高波にのみ込まれそうになったりしたことも。四季折々の表情を追ううち、夏の日差しや冬の風雪に耐える姿に魅せられ、いつしか「世間の荒波に耐えて生きている人の姿を重ねるようになった」と話す。

 傑作の1枚が、田植え前の水田に列車と鉄橋が映り込む「逆さ鉄橋」だ。5月下旬の夕刻、山あいに沈む夕日が雲に遮られることなく、水面が波立たない無風の瞬間を求めて、10年近く現場に通った。その時間はわずか5分。列車は1時間に1往復程度のため「全てのタイミングが重なる瞬間は毎年あるわけではない」と会心の笑みを浮かべる。

 写真集には往時の雄姿から、新しい橋の完成式典で喜びに沸く住民や、2017年11月に展望施設「余部鉄橋『空の駅』」で利用が始まったエレベーター「余部クリスタルタワー」など、半世紀にわたって撮影した約200枚を収めた。

 「鉄橋を未来に語り継ぐ一助になれば」と千崎さん。「長年向き合った鉄橋は古い友達のようなもの。今日までありがとう、そしてさようなら、という思い」と万感を込めている。

 A4判、115ページ、7千円。道の駅あまるべなどで販売。同道の駅TEL0796・20・3617

■鉄橋の鋼材をベンチ、グッズに

 余部鉄橋の鋼材は明治末期、米国から船で運ばれたという。架け替え後の利活用については兵庫県や地元自治体、鉄道事業者と住民らが検討。JR餘部駅のホームや公園施設のベンチに使われるなど、新たな景観資源として親しまれている。

 駅のベンチは長さ約2メートル、幅と高さは約50センチ。ごつごつした部品に触れ、鉄橋の面影を懐かしむ観光客の姿も見られる。

 広島市から城崎温泉へ車で向かう旅行の途中に立ち寄った男性(69)は「道路標識を見て余部鉄橋を思い出し、寄り道した。展望施設のエレベーターが無料とは」と驚く。地域の遺産がなじんだ風景に「鉄橋を築いた先人たちも誇りに感じていることでしょう」と話した。

 近くの道の駅あまるべでは、鋼材から製造した文鎮などのグッズを販売。川本博文駅長(57)は「ここでしか売っていない定番商品」と胸を張る。香美町のふるさと納税返礼品にも採用。価格は850~4150円と高めだが、初めて見た驚きで購入する人も多いとか。

【余部鉄橋】日本最大規模のトレッスル橋として、1909(明治42)年12月に着工し、12年1月に完成した。全長約310メートル、高さ約41メートル。鮮やかな赤色の橋脚は11基取り付けられた。餘部駅は59(昭和34)年、住民の要望を受けて開設。86年12月28日には強風にあおられた回送列車が転落して水産加工場と民家を直撃し、女性従業員ら6人が死亡した。事故を契機に、架け替えに向けた取り組みが進んだ。

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