教材はコウノトリ 名付け親の小3生に起きた変化

2021/02/09 05:30

コウノトリ「清流」を応援する横断幕を作成した児童たち=東河小(同小提供)

 兵庫県朝来市和田山町東和田、東河小学校の3年生23人が、コウノトリを題材にした環境学習に取り組んでいる。昨年、近くの人工巣塔で営巣したペアと巣立った2羽に児童が名前を付け、環境を守ろうと地域のごみ拾いも始めた。担任の陣在沙耶香教諭(32)は「子どもたちには“名付け親”という意識があり、自分たちにできることを考えて行動している」と見守っている。(竜門和諒) 関連ニュース 国内43年ぶり自然繁殖成功のコウノトリ死ぬ 他の個体に突かれたか 親子で争い、殺すことも…ご存じ?コウノトリの意外な“横顔” 2万羽に1羽 民家の庭に白いスズメ

 地元の東河地区協議会は2019年、地域住民からの寄付で久田和地区に巣塔を建設。20年4月に3羽がふ化し、6月に2羽が巣立った。同小は本年度、3年生の環境学習の題材にコウノトリを選んだ。
 児童は親鳥や幼鳥の性格などを地域住民らから聞き取り、父親に「翼」、母親に「夢」、幼鳥の雄に「清流」、雌に「愛結(めい)」と命名。6月には写真付きの紹介ボードを作り、巣塔近くの地区の案内板に掲示した。
 命名したことで愛着がわき、意識も変化した。浜凛誠君(9)は「コウノトリがごみを食べたらあかん」と、毎週金曜の朝と放課後に地域のごみ拾いを開始。岩井晴海(はるか)さん(9)も「ポイ捨てしないように呼び掛けたい」と啓発用の紙を作り、陣在教諭に提出した。
 今年1月中旬、同小の環境学習で講師を長年務めている稲津賢和さん(68)が、伊良部島(沖縄県宮古島市)の愛鳥家長浜邦雄さん(71)のブログの写真で「清流」を見つけた。同月15日にゴム製のようなリングで遊んでいるのが目撃され、16日にはくちばしにはまって取れなくなったという。すぐに陣在教諭に連絡した。
 長浜さんは「えさと間違えてくわえ、上を向いた拍子にはまったのではないか」と推測。えさが取りづらい状態になった。
 児童たちは「何かできることはないか」と話し合い、応援する横断幕(縦1・6メートル、横2・3メートル)を作成した。右側に東河地区、左側に宮古島市の風景を描き、懸け橋として間に4羽を配置。「おうえんしています」「宮古島でペアをつくって新しいコウノトリをつくってね」などのメッセージも添えた。同31日、現地の自治会に宛てて発送した。
 同日、長浜さんがリングが外れていることに気付いた。長浜さんは「子どもたちの思いが届いたのではないか。衰弱した様子もなく一安心」と胸をなで下ろす。
 リングが外れた報告を受けた浜君は「跳びはねて喜んだ」とにっこり。岩井さんは「他のコウノトリが清流みたいにならないようにごみを捨てないようにする」と話す。陣在教諭は「子どもたちが地域のことを自分のこととして考えるようになった。コウノトリがいろいろなことを考えるきっかけも運んでくれた」と目を細めている。

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