兵庫初のトラフグ陸上養殖、脱サラ男性が挑戦 朝来の旧幼稚園舎活用、1年後の出荷見込む
2022/06/07 18:30
トラフグの陸上養殖に挑戦する中村峻さん(左)と藤岡勇市長=朝来市役所
脱サラをして埼玉県から転入した男性が起業し、兵庫県朝来市でトラフグの陸上養殖に挑戦する。天然のフグは漁獲量が減少しており、海での養殖が増えていることに加え、環境への負担がより少ない陸上での養殖技術も開発されている。男性はそれらの技術を利用し、同市の旧幼稚園舎を借りて取り組むという。トラフグの陸上養殖は県内で初めて。(小日向務)
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神戸市出身の中村峻さん(38)。大手精密機器メーカーに勤務していたが、魚を釣るのも食べるのも好きで、「もともと魚に関する仕事がしたかった」という。陸上養殖は設備や保温などの費用がかかるため、販売単価の高いトラフグに着目した。
陸上養殖では、人工海水を使い、水を浄化して排せつ物などを取り除くため、環境に優しい上、最近、中国が条件付きでフグ食を解禁して需要の増加が見込まれることも後押しした。
5月末で会社を退職し、朝来市和田山町の旧寺内幼稚園と旧竹内幼稚園の園舎を借りた。6月中に設備工事に入り、8月下旬にも稚魚約6千匹を放す計画。トラフグが出荷できる1キログラム程度に育つには、天然物で2年程度かかるが、陸上養殖では生育に適した水温を保てるため、約1年後の来年秋には出荷できるという。中村さんが既にフグの調理師免許も取得している。
朝来市は親戚がいてなじみがあったほか、移住者支援の手厚さから同市での起業を決めたという。当面、繁忙期に臨時職員を雇いながら1人で事業に取り組むが、中村さんは「将来は需要などを見て規模拡大を考えたい」とする。地域のさまざまな業種の事業者と協力し、ブランドを育て、加工品の開発も目指す。
養殖事業の発表記者会見に同席した同市の藤岡勇市長は「内陸部の朝来市で、養殖事業に乗り出すと聞いて感激している。ふるさと納税の返礼品にも使いたい。しっかりバックアップしていく」と誓っていた。