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丹波篠山市立中央図書館には、児童書や学術書など、河合雅雄さんの著書や訳書数十冊が並ぶ=同市西吹
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丹波篠山市立中央図書館には、児童書や学術書など、河合雅雄さんの著書や訳書数十冊が並ぶ=同市西吹
昨年夏に出版した「ドエクル探検隊」を読み返す河合雅雄さん。絵は漫画家の松本大洋さんが手掛けた=丹波篠山市
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昨年夏に出版した「ドエクル探検隊」を読み返す河合雅雄さん。絵は漫画家の松本大洋さんが手掛けた=丹波篠山市

 「事実を積み上げる科学とは別に、人間には想像する力がある」-。その力を書きたかったと、世界的な霊長類学者の河合雅雄さん(95)=兵庫県丹波篠山市=が昨夏、長編ファンタジー「ドエクル探検隊」(福音館書店)を出版した。名義は児童書を手掛ける際のペンネーム「草山万兎」。動物学者と児童文学者のまなざしが交わり、背景には丹波地域で過ごした河合さんの少年時代もにじむ。人間の過去と現在、未来への思いを聞いた。(金 慶順)

 -物語の舞台は1935(昭和10)年。篠山町(現丹波篠山市)を思わせる“笹川町”で小学校を卒業したばかりの、竜二とさゆりが主人公だ。2人は「風おじさん」に弟子入りし、犬やカラス、サルなど言葉を話せる動物たちと共に南米ペルーへ旅立つ。絶滅したとされる大型哺乳類ドエディクルスが、今も生存しているという説を確かめるためだ。

 「動物の感情を書いたことはあるけど、動物がしゃべるファンタジーを書くのは初めてやったね。僕は科学者やから、事実を積み上げるのが仕事。でも科学の力とは別に、人間には想像する力もある。それを書いてみたかった」

 「学問で一番大切なのは、新しい考えや技術を『創造』する力だが、『想像』はその母体となる。想像力を育てるには、やはり読書。そしていい友人、いい先生。僕はその辺が大変恵まれていた。恵まれなかったとしても、自分で切り開いていく人もいた」

 -開戦前の時代設定だが、さゆりの生い立ちには戦争の気配がにじむ。後半には、神獣ラウラの語りで大型動物が滅んでいく壮絶な情景も描かれた。

 「昭和10年は、日本の歴史の中ではまだ戦争が始まっていないころ。僕は小学5年か6年で、遊んだり本を読んだり、何をしてもよかった。開戦したら、何もかもが戦争中心になってしまったからね。飢餓で苦しむ動物を描くのは、多くの軍人が餓死で亡くなった戦争に重なった」

 「竜二とさゆりの行動や物語の大きな流れには、自分自身のいろんな記憶や体験が、ちょっとずつ関わっていると思う」

 -共著を含めて数十冊の著書があるが、児童文学を書くときは「草山万兎」のペンネームを使う。

 「名前が雅雄で、6人兄弟の間では『マト』と呼ばれていた。『兎』の字はウサギの社会を研究していたから。兄弟や友達とは近所でかくれんぼしたり、鬼ごっこしたり、コマ回ししたりして遊んだ。北新町で育ったけど、竹やぶだらけでキツネがいた。

 3年生のときに小児結核になり、それからはもうずっと病気と付き合い。小学校は半分も通えなかった。でも腕力が強かったから近所で遊んだり相撲を取ったりしたし、布団の中ではずっと本を読んでいた。

 昔と今では時代が全く違う。でも本を読むこととみんなで遊ぶこと、この二つは大事やなと思う。小学校の6年間で学ぶことは、後からでも追いつける」

【かわい・まさを】1924年、篠山町(現丹波篠山市)生まれ。京都大霊長類研究所所長、日本モンキーセンター所長などを経て、現在は京都大学名誉教授、県立人と自然の博物館名誉館長、県森林動物研究センター名誉所長など。生態学や人類学の観点で、サルからヒトへの進化を研究してきた。児童文学者としても知られる。

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