丹波

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少年時代の憧れだったというオオムラサキの標本と、霊長類学者の河合雅雄さん=丹波篠山市
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少年時代の憧れだったというオオムラサキの標本と、霊長類学者の河合雅雄さん=丹波篠山市
丹波の森公苑で飼育されている国蝶オオムラサキ。名誉公苑長を務める河合雅雄さんの提唱で、丹波地域での飼育や放蝶が広がっている(同公苑提供)
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丹波の森公苑で飼育されている国蝶オオムラサキ。名誉公苑長を務める河合雅雄さんの提唱で、丹波地域での飼育や放蝶が広がっている(同公苑提供)

 「人間は欲望をコントロールすることができるのか」-。昨夏、長編ファンタジー「ドエクル探検隊」(草山万兎名義、福音館書店)を出版した霊長類学者の河合雅雄さん(95)=兵庫県丹波篠山市=はサル学の権威として知られ、その原点は「人間とは何か?」の問いだった。海外フィールドワークにも同行した妻の良子さん(89)と共に、人間と自然の行く末を語ってもらった。(金 慶順)

 -ドエクル探検隊は736ページの大長編。200字詰めの原稿用紙約千枚に鉛筆で執筆した。タブレット端末は持っていてたまに触るが、パソコンやスマートフォンは使わない。

 「昔からこの書き方やな。最初に箇条書きで目次程度のメモを書いて、後はさっと書き上げてしまった。使うのは4Bの鉛筆と消しゴム。千枚書いたけど、書き損じたのは3枚ぐらい。サボりだから、書き直すのが手間なんですわ」

 (良子さん)「鉛筆を削ったり消しゴムで消したり、そうやって手を動かすのが考える時間になるみたい。海外で文房具店を見つけたら絶対に立ち寄るんです。調べ物は本や辞書で。本を手でめくる間にいろんなイメージが湧くのでしょうか」

 -深く携わってきた「丹波の森構想」が昨年度、30周年となった。丹波を国蝶オオムラサキの生息地にしようと、飼育と放蝶の活動も続いている。

 「昔から昆虫少年。オオムラサキは憧れだったけど、3、4回しか見たことがなかったな。高いところを飛ぶ蝶やから。森づくりの活動の多くはボランティアがやってくれた。日本は森林が7割で『森に親しむ』というのは自然なこと。森を生産資源ではなく文化資源として使う考えを育てないといけない」

 (良子さん)「今でもよく四季の森公園を散歩するんですよ。つえで歩きながら、『あの虫を採って』『あのタンポポは外来種や』と立ち止まっては自然観察しています」

 -若いころはよく体を壊したというが、現在95歳。長生きの秘けつは。

 「人間の体は竹と同じ。ある程度までは、しなって、元通りになる。限界を超えるとビッとひびが入る。そうなるとなかなか治らない。自分の体を知ることが第一やな。僕は病気との付き合いが長いから。若いころは体が弱いことですごく損もしたし悔しい思いもあった。フィールドワークに行けないことも」

 「世の中の変化は速い。人間には欲望があり、ほしいものを何でも手に入れようとすることで進歩してきた。でも進歩ばかりがよいという思想では立ちゆかない。人間はおのおのの欲望をうまくコントロールすることができるのか。長生きしたからには、この世界がどうなるか見守りたい」

 -「人間とは何か」の問いからサル学の道に進んだ。およそ1世紀を生きた今、その答えは。

 「なかなか出ませんな。『答えが出ない』ということが分かった。人間って不思議な動物。自分自身を滅ぼす可能性がある。自然を操る能力を持ったから」

 「動物は『種』を永久に維持していく本能を持つが、人間は『個』を考える。好き嫌いはサルにもあるけど善悪を持つのは人間だけ。サイエンスの発見で、人間は幸福にも不幸にもなる可能性の世界を開いた」

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