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書家に揮毫してもらった自作の座右の銘「素人発想、玄人実装」の書を前に、思いを語る金出武雄さん=丹波篠山市西新町
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書家に揮毫してもらった自作の座右の銘「素人発想、玄人実装」の書を前に、思いを語る金出武雄さん=丹波篠山市西新町

 数々の独創的な研究業績を挙げ、本年度の文化功労者に選ばれた兵庫県丹波市出身の米カーネギーメロン大学ワイタカー冠全学教授の金出武雄さん(74)=同県丹波篠山市。「素人のように発想し、玄人として実行(実装)する」を信念として、約30年にわたり米国で研究生活を送ってきた。研究への考えや古里の思い出などを聞いた。

 -顔画像認識、自動運転など多彩な研究に、時代に先駆けて取り組んだ

 「僕は、面白そうなことがあると、すぐにやりたがるタイプ。研究でも日常の遊びでも、とにかく一度やってみる。うまくいくかどうかは別として」

 「アイデアとは基本的に『こうあってほしい』という単純で素直な希望から生まれる。専門家はパターンを習得した人だから、思い込みがあって自由な発想の邪魔をしてしまう。ただ、アイデアをうまく実行するにはスキルが必要だ」

 -「楽しくて役に立つ研究」を志してきた

 「日本で『役に立つ研究』というと、科学的レベルが低いように言われることがあるが、大変な間違いだ。基礎研究者の中には『自分の研究が役に立つか分からない』という人もいる。でも、本来、基礎研究ほど役に立つものはない。応用の範囲が広いから。大切なのは、どう役に立つのかシナリオが言えること」

 -2001年、米プロフットボールの頂点を決めるスーパーボウルの中継に、約30台のロボットカメラを使ったシステム「アイ・ビジョン」が採用された。プレーシーンをぐるりと角度を変えて再現できる画期的なシステムだった

 「僕が初めて5台のステレオカメラを開発し、論文を投稿した際には、査読者からリジェクト(却下)された。理由は『こんな不必要な数のカメラを使うシステムは、高価過ぎて誰にも使われないだろう』。でも、僕はカメラの価格はどんどん下がるから、多数カメラシステムは当たり前になると確信していた。そして、実際そうなった」

 「スーパーボウルの影響は大きかった。あれ以後、カメラをたくさん使うことに対して、世の中の抵抗感が非常に減った。人間は常にコンサバティブ(保守的)。新しい技術を伝えるためには、人々が直感的に分かることが大切だ」

 -旧氷上郡大路村に生まれた。思い出は

 「家の前の小川で泳いだり、近所で捕まえたドジョウを母親にしょうゆで炊いてもらったり。まざまざと覚えている。家はもう無くなっていたが、井戸は思い出通り残っていて驚いた」

 -帰国し、約5年前から丹波篠山で暮らす

 「神戸あたりに住もうかと思っていたけど、マンションなどを見に行ったら、米国生活に慣れた身にはどこも狭い。不動産屋さんに篠山城跡近くの土地を紹介されて見てみると、感じが良さそうだなと。結果的には全く正解。静かなところが気に入った」

 -経験を踏まえ、子どもたちに伝えたいことは

 「『因数分解なんか、なんで勉強する必要があるのか』と思っている子もいるだろう。でも、実は使い道はいっぱいある。理科で習う原理も本来は、日頃の生活で使われるべきものだ。国語や社会も役に立つ。面白さが分かれば、生活が豊かになる」(藤森恵一郎)

【かなで・たけお】1945年、丹波市春日町栢野生まれ。大路第二小1年の夏に神戸市へ。兵庫高から京都大工学部に入り、同大学院博士課程修了。助教授を経て、80年に米国カーネギメロン大学に招聘。91~2001年、同大ロボティクス研究所長。1998年から同大ワイタカー冠全学教授の終身称号を持つ。2016年に京都賞。

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