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94歳で出版した長編ファンタジー「ドエクル探検隊」を読み返す河合雅雄さん=2019年6月、丹波篠山市内
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94歳で出版した長編ファンタジー「ドエクル探検隊」を読み返す河合雅雄さん=2019年6月、丹波篠山市内

 14日、97歳で亡くなった霊長類学の世界的権威で、児童文学者としても活躍した京都大学名誉教授の河合雅雄(まさを)さん。「まだ元気でいてほしかった」「人と自然との共生の理念を受け継いでいきたい」…。晩年を過ごした故郷・兵庫県丹波篠山市では、偉大な功績を称賛する声と死を悲しむ声とが交錯した。

 丹波篠山市の男性(72)は、県立丹波の森公苑(同県丹波市柏原町柏原)の運営に携わっていた頃、当時公苑長を務めていた河合さんと何度も食事を共にした。「先生はそばや辛いものが好きで、お酒もよく飲まれた」と振り返り、「さまざまな分野に造詣が深かった。同じ話を二度することはなかった」と懐かしむ。

 男性が代表を務めた旧雲部小学校跡の交流施設「里山工房くもべ」(丹波篠山市西本荘)も、「名付け親は河合先生」。河合さんは里山の大切さを訴えていたといい「『里山は野生動物との境界であり、四季の移ろいを感じるところ』と話されていた。くもべもその理念を大切に運営してきた」と語る。

 最後に会ったのは、2年ほど前。河合さんの手を握ると「君の手温かいね」と言われたのが忘れられないという。「丹波篠山の才人を亡くしたのは本当に残念。まだまだ元気に丹波篠山の行く末を見守ってほしかった」と別れを惜しんだ。

 また、河合さんの自伝的小説「少年動物誌」を原作に、丹波篠山市などで撮影された映画「森の学校」(2002年、西垣吉春監督)が、国内各地で再び上映され、話題に。丹波篠山観光協会などはロケ地マップを作製、PRしてきた。

 同協会スタッフの女性(38)は「映画のヒットを最後に見届けていただいて良かった。映画の雅雄少年は、自らの思いや志を持ち、目標へ向かっていた。ご冥福をお祈りしたい」としんみり。

 河合さんの自宅に近い書店の女性(60)は「河合先生からプレゼントしていただいた著書『ドエクル探検隊』のサイン入り本は私の宝物。先週もお宅へフキをお持ちしたばかりだったのに…」と訃報に驚いていた。

 会見を開いた丹波篠山市の酒井隆明市長は「ざっくばらんでユーモアのある温かい方。人と自然が共生する丹波篠山のまちづくりに多大な貢献をいただいた。天寿をまっとうされたと思う。その理念や思想を受け継いでいきたい」などと述べた。(堀井正純、綱嶋葉名、藤森恵一郎)

    ◇    ◇

■児童文学者でも業績 「想像は創造の母体になる」

 世界的な霊長類学者の河合雅雄さんは、児童文学者としても知られた。ペンネームは、草山万兎(まと)。2018年夏、94歳の時に長編ファンタジー「ドエクル探検隊」を出版。翌年の神戸新聞社のインタビューでは「科学者は事実を積み上げるのが仕事だが、人間が持つ想像力を書きたかった」とし、「『想像』は学問で一番大切な、新しい考えや技術を『創造』する力の母体になる」と語った。

 幼少期に小児結核を患い、布団の中ではもっぱら本を読んで過ごした。ペンネームの万兎は、兄弟に呼ばれたニックネームにちなんだ。1997~2014年に出版した全8巻の「河合雅雄の動物記」では、自身のフィールドワークの経験に基づき、ゲラダヒヒやニホンザルなどの生態を子ども向けに分かりやすく書き記した。

 ドエクル探検隊は、1935(昭和10)年が舞台だった。篠山町(現丹波篠山市)を連想させる“笹川町”の小学校を卒業した少年と少女が主人公。絶滅したとされる大型哺乳類ドエディクルスを探し、言葉を話せる動物と一緒に南米ペルーへ旅立つ物語だ。736ページの大長編で、動物が話すファンタジーは、新たな試みだった。

 学問で一番大切な「創造力」を養うのは「想像力」ときっぱり。「想像力を育てるには、やはり読書。そしていい友人、いい先生。僕はその辺が大変恵まれていた」と振り返った。「昔と今では時代が全く違う。でも本を読むこととみんなで遊ぶこと、この二つは大事やなと思う」と話した。(真鍋 愛)

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